【MLB】崖っぷちの松坂大輔に射し込む一筋の光明

  • 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
  • photo by Getty Images

 今シーズンの松坂にとって最も重要なことは、中4日で100球前後を投げ抜いていく耐久力だ。松坂が復帰してから4戦目までの投球数は、80、93、101、100。手術してから1年ぶりの投球ということを考えると、十分な内容にも思えるのだが、松坂はこう語る。

「レッドソックスは勝たなければいけないチーム。僕の置かれている立場も同じ。それだけ(中4日で100球前後の投球を続ける)ではダメですね」

 リハビリ最終章の身でありながら、チームを勝ちに導かなければ評価をされない。ボストンでプレイすることの厳しさだ。そして、何より契約最終年という自身の立場。残りのシーズンで結果を残さなければ、来年以降の色よいオファーは厳しくなる。トミー・ジョン手術を決断した時点で、すべての覚悟はあったはずだが、あまりにもタフな環境が松坂を取り巻いている。

 しかし、幸いにも右ひじの状態は想定したよりもずっといい。このことについては、松坂も笑顔を見せていた。

「右ひじについては、アップダウンがあると聞いていましたけど、ダウンしたという感覚は一度もないですね。いい状態と言えるほどではありませんが、少しずつ上がっているという手応えは感じています」

 手術前よりも、球威、制球とも向上している。それは松坂自身もバレンタイン監督も認めている。6月26日のブルージェイズ戦(6回途中1失点)では、松坂入団時から4年間レッドソックスの投手コーチを務めていた敵将のジョン・ファレルも、「ストライクもしっかり取れているし、球自体も良かった」と評していた。

 現在、レッドソックの先発陣は、ジョシュ・ベケットも故障者リストから戻り、クレイ・バックホルツも今月中には戦列に復帰すると言われている。エースのジョン・レスターをはじめ、ローテーションを守る投手の状態もよく、復帰を焦る必要はない。今はただ、来るべき時に備えて万全の状態にしてほしいと願うばかりである。

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