【MLB】松井秀喜と松坂大輔。『早期昇格』は選手生命を脅かす

  • 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
  • photo by AFLO

松坂との対戦では無安打に終わった松井秀喜松坂との対戦では無安打に終わった松井秀喜 松井秀喜と松坂大輔。メジャー復帰を目指すふたりが、最終段階の調整の場として、現地時間5月17日、ノースカロライナ州ダーラムで行なわれた3Aの試合で対戦した。一見、似通った境遇のふたりにも見えるが、大きな違いがあった。

 ふたりともユニフォームの裾をひざ元まで上げるオールドスタイルで試合に臨んだが、松井の場合は両耳のヘルメットとともに義務付けられたものだった。一方の松坂は本人の意思に任せられ、上着も3Aチームの"PAW SOX"ではなく、ひとりだけ "RED SOX"のユニフォームを着ていた。つまり、メジャー40人枠の松坂はリハビリ・アサイメント(リハビリ登板)ではメジャーリーガー扱いが許されるというわけだ。しかし松井は、ひとりのマイナーリーガーに過ぎなかった。

 5月22日の3Aでの登板を最後にリハビリ・アサイメントが終了する松坂に対し、バレンタイン監督は27日にもメジャー復帰登板の意向を持つ。今季のレッドソックスはケガ人が続出し、投手陣も崩壊状態に陥り、地区最下位に沈んでいる。さらに、バレンタイン監督と選手たちの人間関係もギクシャクしていると聞く。松坂にはチーム再建の救世主になってほしいとの思いが、復帰を急がせている。

 松坂もチームの現状を理解しているからこそ、17日の試合はメジャー仕様のユニフォームで挑んだ。マイナー登板はどうしても気持ちの面で入っていけないことがあり、少しでもメジャーの雰囲気を作り出したいというのがメジャーのユニフォームで投げた真意であり、試合前には松井との対戦に対し、「ここまで来たら注目されて悪いことはない。ちゃんとしたものを出したい」と気持ちを引き締めていた。

 しかし、現実的には27日のメジャー復帰は厳しいだろう。もう少し時間を与えるべきだと思う。試合後、松坂も「まだ変化球を投げる時に怖さがある。どうしても腕の振りが遅くなってしまう」と語っていたように、まだ万全とはいえない。なによりトミー・ジョン手術からの復帰に焦りは禁物だ。

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