【MLB】ユーティリティプレイヤー・川崎宗則がマウンドに立つ日 (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by Getty Images

 そんな活躍もあって、その年のマリナーズはメジャータイ記録のシーズン116勝を記録。ぶっちぎりで地区優勝を果たしました。それ以来、マクレモアは『スーパーサブ』と呼ばれるようになったのです。メジャーリーグで『スーパーサブ』という表現が使われたのは、マクレモアが元祖ではないでしょうか。マクレモア本人も「本来、ユーティリティプレイヤーは週に1~2試合しか出場機会がない。しかし、僕は毎試合のようにプレイするので、立派なレギュラーだ」と語るとおり、彼がユーティリティプレイヤーの新しい概念を生み出したとも言えるでしょう。

 もちろん、川崎選手にはレギュラーの座を獲ってほしいのですが、マクレモアのようなユーティリティプレイヤーとしてチームを支える選手になる道もあるわけです。ユーティリティプレイヤーとしての価値の高さは、メジャーと日本ではまったく違います。例えばチームが大量リードされたとき、ピッチャーとして緊急登板することも、彼らの役割のひとつなんです。

 これは、明らかな負け試合に本職のピッチャーを投げさせるには、あまりにももったいないという考えで、ベンチ入りが限られているメジャーならではの発想です。逆に、延長無制限のためにピッチャーを使いきってしまった場合、苦肉の策として野手がマウンドに上がることもあります。メジャーでは年に何度か、そういうシーンがあるので、個人的にはひそかに『川崎選手が日本人野手として初めてマウンドに立つのでは?』と期待しています。何事にも積極的に取り組む川崎選手の性格なら、それもアリなのかなと。

 スター選手をマウンドに上がらせることは、まずありません。万が一、ひじや肩を壊してしまったら大変ですから。過去にホセ・カンセコが志願して登板し、ひじをケガして残りシーズンを棒に振ったことがありました。イチロー選手も以前、ピッチャーをやりたいという話をしていましたが、さすがにそれは難しいでしょう。もし、川崎選手がマウンドに上がれば、イチロー選手は非常に羨ましく思うのではないでしょうか。ともあれ、川崎選手が今後、どのようにチームに貢献していくのか、ぜひお見逃しなく。

プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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