【MLB】松坂大輔は最高のバースデープレゼントをバレンタインに贈れるか? (2ページ目)

  • ブラッド・レフトン●文 text by Brad Lefton
  • photo by Reuters/AFLO

 そしてキャンプ中、バレンタインは松坂がチェンジアップを投球練習で投げているところを見て、さらに確信したようだった。自らケージの後ろに立ち、松坂がチェンジアップを投げると、「ナイスボール!」と声をかけた。その「ナイスボール!」は、松坂がチェンジアップを投げるたびに練習場に響き渡った。

 技術面でもバレンタインは、松坂の投球フォームについて少し気にしているところがある。

「手術後、彼のフォームは少し変わりました。軽く投げている時、彼はグラブを下げるクセがあり、後ろのポケットにグラブを入れるような感じに見えます。しかし、彼が思い切り投げる時のフォームは良く、グラブも胸あたりまで上げています。この動作は、よりスムーズに体を前に出し、右腕の負担を減らします。彼が思い切り投げる時にグラブが下がっていないことはいいことですが、それ以外のときに下がってしまっているのが気になります。というのも、練習の際に間違ったフォームで投げていたら、それが身に付き、疲れてきた時にその悪いクセがどうしても出てしまう。この件については、彼と何度も話をし、理解してくれていると思います。私としては、4月中に投げ込みをして、彼の一番いいフォームを取り戻してくれることを願っています。彼は、そのベストフォームを毎日のキャッチボール、投球練習で探しているところでしょう」

 これは「体をいかに効率的に負担なく動かすか」という、生物動力学と言われるものである。バレンタインは、はじめて監督となったレンジャーズ時代(1985年~92年)から生物動力学を重んじている。なかでも4年間ともに戦い、のちに野球殿堂入りするノーラン・ライアンのスムーズなフォームには感心した。ライアンが重要視していたことは、常にグラブを上げ、そのグラブを前に出すと同時に体重をホームプレートに向けて移動することだった。ライアンの投球フォームを研究し、彼と投球フォームについて何度も話し合った。そしてライアンのフォームこそが、肩やひじの負担を減らし、限りなく理にかなったフォームであると、バレンタインは確信した。

 バレンタインがその生物動力学の知識を、松坂の先発ローテーション復帰に役立てることは、間違いないであろう。あとは、万全の状態で復帰できるタイミングが、いつになるかということだけである。

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