【MLB】ヤンキース初登板6失点KO。黒田博樹が浴びたア・リーグ東地区の洗礼 (2ページ目)

  • 水次祥子●文 text by Mizutsugi Shoko
  • photo by AFLO

 しかも、敵の黒田攻略も巧妙だった。試合前、レイズのジョー・マドン監督は、「黒田はオーソドックスな投手だから、我々は型通りのアプローチをするつもりだ」と語った。一度も対戦したことがないにもかかわらず、まるですべて分かっているといわんばかりの口ぶりだった。打線は1、3、7番以外、左打者をずらりと並べた。左打者といえば、黒田にとっては苦手でもあり、課題としていたところだった。

 1回に失策の走者を出した後、2四球で二死満塁のピンチに陥った黒田は、低めが得意な6番ルーク・スコットに低め速球を適時打され2失点。2回にも2安打されて1点を失い、3回にはソロ本塁打、6回に2連打され四球を出したところで降板した。5回3分の2を投げて被安打8、失点6(自責4)、四球4で敗戦投手。メジャー移籍後、シーズン初登板はすべて勝ってきた黒田にとっては初めてとなる黒星発進。これこそ、まさに強豪揃いのア・リーグ東地区の洗礼なのだろうか。

 マドン監督は、「我々のリーグ、地区では、投手はストライクゾーンで勝負してアウトを取らなければならない。ストライクゾーンに投げて空振りを取れなければ、勝負するのは無理だ」と黒田の投球をバッサリ切った。辛辣なニューヨークのメディアも「"ソフト"なナ・リーグ西地区で投げていた投手に、ア・リーグ東地区での先発が務まるのか疑問が深まる」と、早くも悲観的なムードだ。

 しかし、ニューヨークのファンやメディア、そしてライバル球団は、黒田についてまだ知らないことがある。それは、この37歳メジャー5年目の右腕がいかに修正能力に長けているかということだ。ドジャース時代も、うまくいかない部分はその都度修正し見事にアジャストしてきた。4年目の昨季に勝利数(13勝)、防御率(3.07)、登板数(32試合)、投球回数(202イニング)でいずれも自己ベストをマークしたのは、修正能力の高さの賜物だ。ア・リーグ東地区に移籍しても、それは変わらないはずだ。黒田博樹の新たな挑戦は始まったばかりである。

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