【MLB】ダルビッシュ、プホルス...。なぜ西地区に大物選手が集まったのか? (2ページ目)

  • 阿部珠樹●文 text by Abe Tamaki
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 アメリカのスポーツ中継の事情にくわしいジャーナリストは言う。

「メジャーの球団は、これまでは観客動員が減るということでテレビ中継には熱心ではありませんでした。しかし、有料のケーブルテレビが普及して、野球が人気コンテンツとしての価値を高めるにつれて、テレビマネーの力を知った。ヤンキースなどはいち早く自前の局を作ってグループで大きな利益をあげている。今シーズン、西地区の2チームが結んだ大型契約はそうした波がようやく西にも届いたという証拠です」

 地元テレビがホームチームと大型の独占中継契約を結ぶケースは今後も増えそうだ。噂では、シアトル、サンディエゴなどの局もそうした構想を持っているというから、近い将来、それらの都市の球団が一夜にして巨額資金を手に入れ、積極的な補強に動くかもしれない。

 また、2003年からはじまった年俸総額に対する課徴金制度、いわゆる"ぜいたく税"の影響もあるという。ヤンキースは昨年1390万ドル(約11億円)の課徴金を納めた。ヤンキースが課徴金を払うのは、この制度がはじまった年から9年連続である。いかに収益の大きいヤンキースといえども、この金額はさすがにバカにはならない。しかも高額で獲得したものの期待ほどの活躍をしていない選手や、年俸を引き下げるのが難しいベテランも少なくない。そんなこともあってチームは緊縮財政に向かっている。

 一方、昨年340万ドル(約2億8000万円)の課徴金を納めたレッドソックスも事情は似たようなものである。ティム・ウェイクフィールド、ジェイソン・バリテックが引退したが、このオフは積極的な補強には動かなかった。

 アメリカ在住の記者はいう。

「課徴金の支払いが負担になっているのは確かです。そしてもうひとつ、この2、3年のうちにベテランや不釣合いな年俸の選手にお引取り願って、課徴金を払わずに過ごし、何年かしたら巨大な資金を使った勝負に出るという球団の思惑もあるのではないでしょうか」

 新規事業が当たって思わぬ利益が転がり込んできた上に、老舗のライバルはリストラなどで内部留保を心がけている。オフの主役を務めたレンジャーズ、エンゼルスの状況を一般企業に例えるとそんなところだろうか。

 しかし、資金にも限界はある。それにライバルだっていつまでも指をくわえてみているはずはない。短い間に好結果を出すことが求められるのはいうまでもない。ダルビッシュやプホルスの今シーズンの成績は、マネーゲームの勝敗にもかかわってくる。

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