【MLB】今年、チームから最も期待されている日本人投手は? (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by AFLO

 一方の岩隈投手は、エースの右腕フェリックス・ヘルナンデスと、昨年10勝の左腕ジェイソン・バルガスに次ぐ先発3番手のポジションと期待されて入団しました。しかし、ジャック・ズレンシックGMは岩隈投手に対し、不安も感じていたようです。というのも、昨年の岩隈投手は右肩の痛みで戦線を離脱し、勝ち星も6勝止まり。マリナーズが1年契約(年俸150万ドル/約1億2000万円)を提示したのも、そんな背景があったからだと思います。

 そしてオープン戦が始まれば、ニューヨーク・ヤンキースから獲得したヘクター・ノエシや、昨年デビューした23歳のブレイク・ベバン、ベテラン右腕のケビン・ミルウッドら先発の座を争うピッチャーが次々と好投。一方、岩隈投手は3試合に投げ、9イニングを14安打8失点と、先発として満足のいく数字を残せませんでした。その結果、ウェッジ監督は21日に、岩隈投手を中継ぎで起用することを明言。同日にリリーフで3イニングを無失点と好投しましたが、岩隈投手の先発ローテーション入りは見送られました。ただ、開幕後でも先発陣が崩れれば、シーズン途中での先発転向も可能性がないわけではありません。先発投手としての能力は高いだけに、一刻も早くメジャーの環境に慣れ、本来の調子を取り戻してくれることを期待します。

 そして今、一番気になっている選手といえば、テキサス・レンジャーズの上原浩治投手です。現在、最も厳しい状況に追い込まれていると言えるでしょう。まさに当落線上の選手です。いつ、どんな決断が下されるか分かりません。

 ダルビッシュ有投手を獲得したことで、レンジャーズは昨年先発に転向させたアレクシー・オガンドを再びリリーフに戻しました。それにより上原投手が余剰戦力となり、レンジャーズはトロント・ブルージェイズへのトレードを画策。上原投手が拒否権を行使したので話は消えましたが、オープン戦の結果は、今のところ芳しくありません。はじめの3試合では、3回3分の1イニングを投げて7安打6失点、2本塁打、防御率16.20......。今年のキャンプではカットボールに磨きをかけ、一発病をなくそうと努力していただけに、非常に残念です。

 しかも今年のブルペンには、右投手が実に多いんです。右投げの上原投手は、右打者だけでなく左打者にも強いのが持ち味のはずでしたが、オープン戦では左バッターにもホームランを打たれてしまいました。それにより、レンジャーズは現在、左のリリーフ投手を探しており、左投手獲得のために上原投手かマーク・ロウのどちらかを放出するだろうと報じられています。

 キャンプインまでは、建山義紀投手のほうが当落線上に立っていました。しかし、建山投手はオープン戦で結果を残し、今では上原投手よりチーム内の評価は高いです。レンジャーズで開幕戦を迎えられるのか、それともトレードに出されてしまうのか、上原投手のポジションは今、非常に不安定な状態と言えるでしょう。

 一方、ニューヨーク・ヤンキースに移籍した黒田博樹投手は、まさに安泰と言えます。というのも、マリナーズから獲得し、2番手を争うはずだった豪腕マイケル・ピネダの速球が、まったく走っていなかったからです。オープン戦序盤では、わずか92マイル(時速約148キロ)程度。その結果、黒田投手がエースのCC・サバシアに次ぐ先発2番手の地位を確保しました。

 黒田投手はオープン戦3試合で9イニングを投げ、フォアボールはわずかに2個。伊良部秀輝投手や井川慶投手といった、かつてヤンキースが獲得した日本人投手と対照的なコントロールの良さを披露し、ジョー・ジラルディ監督からの信頼も絶大です。さすが年俸1000万ドル(約7億7000万円)の価値があります。ドジャース4年間の実績を引っさげ、名門ヤンキースの先発2番手として開幕を迎える黒田投手は、今年の日本人メジャーリーガーの中で、現時点では最も確固たるポジションを得ている投手と言えるでしょう。

プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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