【MLB】ダルビッシュ有が初登板で見せた『ふたつの変化』 (2ページ目)

  • 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 そして2回。この回はダルビッシュ本来の飄々(ひょうひょう)たるピッチングでスタートする。先頭ベナブルへの初球は67マイル(約108キロ)のスローカーブ。この回は8割の力でボールをコントロールすることに主眼を置こうとしているように見えたが、ベナブルに二塁打を打たれ、一死後、走者が三塁に進むと、再び闘争本能に火がついた。

 95マイルのストレートでダーネルをピッチャーゴロに仕留めると、続くベーカーには90マイル(約144キロ)の高速フォークで三振。ピンチは背負ったものの無失点で切り抜け、この日のマウンドを終えた。試合後、ダルビッシュは自身の投球を次のように表現した。

「思っているよりもフォーシーム(直球)とスライダーが良かった。今までやってきた感覚でできた。思った以上によかったです」

 上々の出来であり、メジャーで十分戦っていけることを証明した登板だったが、ダルビッシュが見せた"ふたつの変化"も見逃すわけにはいかなかった。

 ひとつは、グラブの使い方である。ダルビッシュは投球の際にグラブが三塁方向に向くのがひとつの特徴であったが、この日はほぼ正面、つまり本塁方向に向いていた。

 もうひとつが、投げる際の歩幅である。会見で「歩幅が狭くなったのでは?」と問われたダルビッシュは「なっていません」と否定したが、映像は正直である。あらためて確認してみると、日本時代よりも少しだけ狭くなっていた。

 このふたつは、滑るボールに対する彼なりの対応と思われるが、この日のピッチングを見る限り、苦労している素振りはまったく見られなかった。だから本人も試合後のコメントのように、手応えを感じたのだろう。

 いずれにしても、オープン戦はまだはじまったばかり。ダルビッシュの調整はこれからが本番になる。今後、メジャー相手にどのようなピッチングを見せていくのか、楽しみは尽きない。

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