【MLB】ダルビッシュに追い風となる『レンジャーズ流管理法』 (2ページ目)

  • 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
  • photo by Getty Images

 レンジャーズの投手コーチは、正確無比なコントロールで"精密機械"の異名をとったメジャー通算355勝のグレッグ・マダックスの実兄であるマイク・マダックス。弟ほどメジャーでの実績はないものの、兄も15年間で通算15勝、20セーブを挙げ、柔軟な指導法と配球論には定評がある。その彼が次のように語った。

「昨年、建山(義紀)とともに戦い、日本と米国には同じ野球でありながら大きな違いがあることを学んだ。調整法、環境もそうだし、通訳がいても言葉には壁が存在する。また、文化も違うことを学んだ。建山の存在は大きかった。だから、投げ込みが必要だと思えばやらせるし、日本流というものを理解できていると思っている」

 そしてマダックス投手コーチは、まずダルビッシュの意向を最大限に尊重するつもりだと言う。キャンプで投げ込みがしたければ認め、シーズン中も中4日の登板間隔で疲労が残るようであれば中5日、時には先発を1回飛ばすことも考えていると言う。すべてはダルビッシュの能力を最大限に発揮させるためだ。だからと言って、ダルビッシュだけを特別扱いするわけではない。

「ここ(テキサス)の夏場はキツイからね。シーズンを通して中4日で先発するのはタフだ。例えば、コルビー・ルイス(元広島)は2年連続で200イニングを投げた上にポストシーズンでも多くを投げた。疲労への対処は考えないといけない。投手とは話し合いながら、それぞれベストの選択をとっていくつもりだ」

 投げ込みの容認や柔軟な姿勢があるのは、ノーラン・ライアン球団社長兼オーナーの存在が大きいことは言うまでもない。46歳まで豪腕投手として投げ抜き、通算324勝を挙げた大投手はメジャーで主流となっている、「先発投手は1試合100球まで、シーズンは200イニング」という考え方に異論を唱えてきた。そればかりでなく、「投手は、特に若いうちはたくさんの球とイニングを投げ、技術と肩を作り上げるべきだ」という日本の名投手たちと同じ考えを持ち合わせている。

「日本が好き。自分には日本が一番合っている」と公言しているダルビッシュに対して、日本流の調整を肯定しているライアン社長も「ダルビッシュは25歳と若く、将来性があることが何よりの魅力」と語る。現状において、両者は最高のマッチングと考えていいだろう。ダルビッシュにとってこれほどの追い風はない。

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