「大野のワンマンチームと呼ばせない」。大島高校ナインが見せた意地と成長の夏 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 6番・三塁手の前山龍之助は準々決勝まで13打数2安打と不振を極め、三塁守備でもミスが目立った。本人も「ふがいないプレーばかりで、この3日間ミスが頭から離れませんでした」と語るほど悩みは深刻だった。大会前から控え三塁手の体岡大地(2年)が好調という背景もあり、6月の時点で塗木監督に「夏は体岡くんを使うのですか?」と聞くとこんな答えが返ってきた。

「夏はやっぱり3年生の盛り上がり次第だと思いますから。前山もこのままでは終わらないでしょう」

 7月22日の準決勝・国分中央戦でも、塗木監督は前山を先発で起用している。スタメン落ちも覚悟したという前山は、意気に感じたという。

「スタメンと言われた時は『絶対に期待に応えてやる』と思いました」

 ファーストスイングから快打を放ち、「あ、これはいけるな」と乗った前山は3安打2打点と実力を発揮。チームも7対0とコールド勝ちした。試合後、塗木監督は前山についてこう語っている。

「前山は落ち込んでいましたけど、ずっとバットを振り続けていた子なんです。練習に早くこなければいけない時、最初にくるのが前山で、チームのみんなもそれを見てきました。私はスタメンを替えようという思いはなかったし、スタッフやキャプテンにも聞いて全員一致で前山を使いました」

9回二死から2点タイムリーを放った大島高校・青木蓮9回二死から2点タイムリーを放った大島高校・青木蓮この記事に関連する写真を見る

代打・青木蓮の執念のタイムリー

 外野手の青木蓮は春のセンバツでは背番号7をつけながら、慣れない甲子園球場で手痛い守備のミスを犯した。日頃から「ひとりのミスを全員のミスにしない」とチームで補い合うことを大事にしているだけに、チーム内に青木を責める者はいなかった。だが、青木は「守るのが怖い」と感じるほど思い詰めてしまった。

 6月に奄美大島で心境を聞いた際、青木はこんな本音を漏らしている。

「最近は何をやってもうまくいかなくて。捕れない焦りから投げるほうも悪くなって、ひとつ悪くなると全部崩れてしまいました。夏の大会まで時間がないなかでどうやって治すか考えているんですけど、まだ答えが見つかっていません」

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