履正社の名将が母校・東洋大姫路の監督へ。総工費1億4千万円の室内練習場完成で「全国で勝てるチーム」を目指す (3ページ目)

  • 谷上史朗●文・写真 text & photo by Tanigami Shiro

 新設のトレーニングルームには、パワーアップのための機器が並んでいた。効果が出るまでには少し時間はかかるだろうが、肉体強化の先に岡田が見据えるのは打力アップだ。

 東洋大姫路の最大の課題は、厳しく言えば"貧打"にあった。夏の甲子園は2011年が最後だが、以降の10年、県大会で敗れた試合の得点を並べるとこうなる。「5、2、0、0、2、1、0、2、6、0」。兵庫3位から近畿大会ベスト8でセンバツ出場を決めた昨年秋も、僅差の試合が続いたがエース・森健人の踏ん張りで勝利した。公式戦9試合でチーム打率は3割に満たず、本塁打は0。センバツでも初戦で高知に2対4で敗れた。

 昨年秋の近畿大会直後、藤田の勇退を伝える会見の場で、大森茂樹校長が次期監督への期待を込めたのもこの点だった。

「岡田監督には、池田高校の蔦(文也)監督のような攻めダルマのイメージがあります。ぜひ本校でも強打のチームをつくっていただきたい」

 直後、この発言を岡田へ向けると、力を込めてこう答えた。

「戦いのなかで計算できるのは守りですけど、全国で勝つにはバッティング。松本さんたちが全国制覇を果たした時も、1番から9番までホームランを打てる選手が並んでいました。だから、僕のなかには"打力の東洋"のイメージがありますし、ここからは"強打の東洋"と言われるチームをつくっていきたい」

 人工芝が敷き詰められた室内練習場には、ピッチングマシン6台が設置されている。さらに岡田の就任以降、グラウンドのバッティングケージを4つから5つに増やし、室内と合わせれば同時に11カ所で打てるようになった。

 しかし、こちらもすぐに効果は出るわけではない。春の兵庫県大会も準々決勝以降は、3対2(須磨翔風)、1対0(滝川二)、0対2(報徳学園)と、相変わらずロースコアの戦いが続いた。

選手の野球脳を鍛える

 岡田が肉体強化、打撃強化と並び、もうひとつ力を入れ、格闘しているのが選手たちの頭脳改革だ。

「基本の動きをしっかり覚えて、そこからは自分で考えてプレーできるようにならないと。言われてやっているだけでは伸びないし、試合でも、ヒットが続かないと点がとれない、勝てないということになる」

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