甲子園優勝→ヤクルト入団→サラリーマン→高校野球の指導者。内田和也の人生の転機は「トライアウト」 (3ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Sportiva

── グラウンドがあるとはいえ、長方形の人工芝で、決して恵まれているわけではありません。

「スペースと時間は限られているので、効果的に使用しようと考えています。90人を半分に分け、半分はシートノック。半分はバント練習、ティーバッティング、フリーバッティングをします。水曜日と金曜日は野球部がグラウンドを1日3時間全面使用できますが、月曜日と土曜日はサッカー部との共用で1時間半ずつ。火曜日と木曜日はグラウンドの脇で投球練習、ティー打撃、サーキットトレーニング、もしくは練習を休みにします。そして日曜日は遠征です。

 強豪校の野球部は恵まれた環境にありますが、『知恵と工夫で甲子園に出る』というのが私のモチベーションになっています。あと、プロ野球の投手から理学療法士に転じた栗田聡さん(1986年広島ドラフト1位)が知り合いで、選手のコンディショニングの面倒を見てもらっています。そのおかげで、選手のパフォーマンスはかなり上がりました」

── 正式に監督に就任してからの戦績は、2017年夏が東東京大会4回戦進出、2017年秋ベスト8、2018年夏2回戦、2019年夏ベスト8、2020年夏4回戦、2021年夏4回戦と、まずまずの結果を残されています。

「ベスト8に残った時は好投手がいて、守り勝つチームでした。ただ、ベスト4の壁は厚いです。これまで関東一高に2度負けていますが、向こうは"負けない野球"をやります。打てない時でも、走塁、守備力が鍛えられていて、少ないチャンスをモノにして守り勝つ。こういうチームが全国でも勝てるんだと」

── 内田監督が目指す理想の野球とは?

「小倉監督がよく言っていた『10対0で勝つ野球』です。そこを目標にして、選手の能力を大きく伸ばしたいと思っています。高校時代、私の同期には千葉英貴(投手/ドラフト横浜6位)、近藤一樹(投手/近鉄7位)、都築克幸(二塁手/中日7位)、さらに原島正光(外野手/明大→日立製作所)がいました。ただ、これだけのメンバーがいるからといって、ラクに勝てるわけではありません。それぞれが努力して、チームとしてまとまっていけないと果たせない。だから"10対0"で勝つというのは、ものすごく深い意味があると思っています」

後編につづく>>

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る