大島高校野球部に欠かせない3人の島外出身選手。なぜ彼らは奄美大島へとやって来たのか? (2ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

チームの愛されキャラ、嶺塁守チームの愛されキャラ、嶺塁守この記事に関連する写真を見る 同じグラウンドで練習する野球部を見て「格好いいな」と感じていた嶺は、導かれるように野球部に入部する。走ることが苦手で練習についていくだけでやっとだったが、「寮の先輩が仲良くしてくれたので続けられました」と笑う。

 技術的にはチームの戦力になるのは難しいレベルにある。それでも実戦練習で三塁コーチを務め、献身的にチームを声でもり立てる嶺は強烈な存在感を放っている。レギュラーセンターの中優斗は「塁守は愛されキャラなんです」と教えてくれた。

 今春のセンバツでは、嶺は18人のベンチ入りメンバーから漏れている。それでもシートノックの補助で甲子園の土を踏み、試合中は一塁側アルプススタンドで仲間たちを応援した。

「自分より打てる人、うまい人はいっぱいいます。でも、声かけやランナーコーチは自分が一番誰にも負けないところだと思います。そこだけは頑張って、チームのためになることを考えています」

島外出身者の大きな役割

 まさか自分が甲子園に行けるなんて──。そんな思いを抱いているのは、控え内野手の粟飯原雄斗(あいはら・ゆうと)も同じだ。粟飯原は兵庫県尼崎市の中学から大島へと進んでいる。野球の本場からやってきた「野球留学生」というわけではなく、粟飯原も嶺と同様に高校で野球を続けるつもりはなかった。

 母方の祖父母が奄美大島に住んでいることから、粟飯原は夏休みがくるたびに奄美大島へ遊びに出かけた。粟飯原は何のてらいもなく、「もともと島が大好きだったんです」と語った。

「海があって、山があって、ハブや黒うさぎのような珍しい生き物がいて。都会では体感できないことがいっぱいあって、毎年1カ月は島にいました。島の雰囲気に憧れを抱いて、『島で生活したい』と思うようになったんです」

 中学3年の夏、親が鹿児島大会準々決勝、大島対神村学園戦のインターネット中継を見せてくれた。大島は9回裏に大逆転を許し3対4で敗れたが、粟飯原は「島のチームでもこんな熱い野球ができるんだ」と野球部に入りたいと思うようになった。

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