鈴木誠也は「プロでやっていけるかもしれない」。二松学舎高時代の恩師が「代走」出場で感じた飛躍の兆し

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Sankei Visual

周囲に気を配ることができる選手

 東京五輪が開催された2021年夏、二松学舎大付属の監督である市原勝人は、教え子の今の姿を想像することができなかった。当時、鈴木についてこう語っている。

「誠也は将来、メジャーリーグでプレーすることを思い描いているでしょう。でも、私はまだ活躍する姿をイメージできません。メジャーリーグでホームランを連発するようなバッターになるのか、チームの勝利に地道に貢献するタイプになるのか。大谷翔平くんのように主軸を任される姿を今は想像できない。高いレベルの野球に接して、どうやってメジャーで戦うのか、それを楽しみにしています」

 なかなか所属球団が決まらず準備不足が心配された鈴木だが、関係者の不安をよそに開幕から大活躍を見せている。

 開幕戦でメジャー初ヒットを記録。現地時間4月16日時点で8試合に出場し、ホームラン3本、打点は10、打率は.409。目の肥えたシカゴ・カブスのファンをうならせる打撃で、「新人王、間違いなし」と高い評価を受けている。

高校時代はピッチャーだった鈴木誠也高校時代はピッチャーだった鈴木誠也 1994年生まれの鈴木の同学年には、甲子園で春夏連覇を果たした大阪桐蔭の藤浪晋太郎(阪神タイガース)、花巻東のエース・大谷(ロサンゼルス・エンジェルス)といったスターがいた。高校時代に一度も甲子園の土を踏むことができなかった鈴木は、全国的には無名の選手だった。

 しかし、その実力はずば抜けていた。中学生の頃から鈴木を知る市原監督は言う。

「誠也が中学生の頃から『すごくいい選手だ』と聞いていました。ピッチャーとしてよりも、野手としての魅力のほうが勝っているように私には見えました」

 硬式少年野球チームの「荒川シニア」で活躍した鈴木のもとには、40を超える高校から誘いの声がかかったという。だが、鈴木が選んだのは、長く甲子園から遠ざかっていた二松学舎大付属だった。

「彼は"やんちゃ坊主"みたいに見られるかもしれませんが、ものすごくいい子で、周囲に気を配ることができる。みんなとワイワイ野球をするのが好きなタイプです」

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