大阪桐蔭の圧勝Vとコロナ禍の因果関係。「晩熟選手」の出現で夏の高校野球勢力図は激変する⁉︎ (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 1回戦16試合で出た本塁打数はわずか1本で、2021年の3本、2019年(2020年は開催中止)の6本と比べると少なかった。勝亦さんは「これは主観ですが」と前置きしたうえで、こう考察する。

「大会前の実戦経験の少なさや、カットやツーシーム系の芯をずらすようなボールが多いことも影響しているのかもしれません」

 ところが、2回戦以降で浦和学院と大阪桐蔭の選手が本塁打を量産。とくに大阪桐蔭は大会最多記録を更新する11本塁打を放った。最終的に大会で18本の本塁打が飛び出したが、そのうち大阪桐蔭が11本、浦和学院が4本と8割以上を占める。

体力強化の時間が圧倒的に少ない

 投手に関しては山田陽翔(近江)が1回戦で最速146キロをマークしたものの、全体的にスピードボールを投げる投手は少なかった。その一方、宮城誇南(浦和学院)が大分舞鶴戦で13奪三振、辻田旭輝(クラーク記念国際)が九州国際大付戦で11奪三振、五島幹士(大垣日大)が只見戦で18奪三振。球速以上にキレを感じさせる投手がいたことも確かだった。

 全体的な印象としては、勝亦さんも「スケールの大きな選手は少ない」とスカウト陣と同じ見解を示した。その背景を、勝亦さんはこのように分析する。

「新3年生はたしかにコロナ直撃の世代で、制限のなかでの練習を強いられています。限られた時間のなかで何を優先するのかは、高校によって異なります。項目で言うと、次の3つになります。

①体力面(出力)......投手なら球速、打者ならスイング速度や打球飛距離

②正確性......投手ならコントロール、野手なら打撃のミート率、守備の確実性

③連係・戦術・戦略......実戦での強さ、選手、指導者間のコミュニケーション

 ①を優先するなら計画的かつ定期的なトレーニングと、適切な食事が必要です。②の習熟にはある程度時間が必要で、③も実戦形式での練習やミーティングが必要になってきます。これらのうち、試合を成り立たせるのに必要なのは、②の投手のコントロールと、③の野手の連係でしょう。限られた時間の中で②③を優先せざるを得ず、①に割く時間が少ない、または個人に任せているチームが多いのかもしれません」

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