和歌山東の2回戦。浦和学院相手に「日本に勇気と元気を与えるゲーム」で大波乱を起こせるか (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

監督と選手の強固な信頼関係

 昨秋の和歌山大会、近畿大会と、和歌山東は同じ戦い方を貫いてきた。9月の新人戦で0対11とコールド負けした智辯和歌山に、1カ月後の県大会準決勝では5対4と雪辱。その試合でも、米原監督は山田や同じく左投手の石野涼をワンポイントで投入し、試合の流れを引き寄せている。

 攻撃面でも長打を打てる打者が少ない分、盗塁、バント、ヒットエンドラン、三塁走者がゴロを打った瞬間にスタートする「ギャンブルスタート」など、あらゆる戦術を駆使する。監督がサインを出しても、選手が応えられなければ意味がない。だが、和歌山東には監督と選手の間で強固な信頼関係ができあがっている。

 米原監督は言う。

「選手には『どんどん仕掛けるから、ついてこい』と言っています。それがウチの野球やし、失敗しても絶対に引きずるなと。失敗したって、使った監督が悪いんやから。そうやってここまで勝ち上がってきたので、失敗しても怖くはないですね」

 昨秋から今に至るまで、米原監督が口癖のように使っているフレーズがある。それは「魂の野球」だ。米原監督は自分に自信を持てない選手たちを前に、こんな言葉で鼓舞してきたという。

「おまえらはこれまでの環境では力を出せていなかっただけや。おまえらの魂はそんなもんちゃうやろ」

 目標とする甲子園ベスト8まで、あと1勝。目の前に立ちはだかるのは関東屈指の名門・浦和学院だ。米原監督は「いい戦いができると思います」と不敵に笑うが、「魂の野球」がさらなる波乱を巻き起こす可能性は十分にある。

「日本に勇気と元気を与えるゲームをする」

 米原監督のフレーズは、多少大仰に聞こえるかもしれない。だが、誰よりも勇気がなければ、人に与えることなどできない。和歌山東の野球は、失うもののない人間の強さを教えてくれる。

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