「まだプロはあきらめていません」。オーバー24、ドラフト戦線を賑わす社会人の実力者たち (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 宮本慎也臨時コーチ(元ヤクルト)の指導を受け、バットを振り続けるなかで福永は自身の打撃に手応えを深めている。

「去年くらいからあまりフルスイングせず、打席のなかでトスバッティングするつもりでバットを出せるようになってから状態がよくなってきました。実際には勝手に力が入るので、自分はトスバッティングくらいの感覚でちょうどよくなるんです」

 スポニチ大会で守ったサードだけでなく、セカンドの練習も継続している。右の内野手はプロでも需要が高いだけに、即戦力を求めるチームへのアピールに余念がない。

「圧倒的な成績を残したいです。それで(ドラフト指名が)どうなるかはわからないんですけど」

 今から5年前。24歳にしてドラフト指名漏れを経験しながら翌年もレベルアップし続け、都市対抗でチームを優勝に導いた好打者がいた。プロへの道が閉ざされかけた時、自分を衝き動かすものは何だったのか。そう聞くと、好打者はこう答えた。

「うまくなりたい。やっぱりそこに尽きると思います。野球がうまくなるために、日々練習しています。それは『プロになるため』じゃない。バッティングも守備も、まだまだ技術は向上できると思っていますし、もっといろんなプレーができるようになりたいんです」

 その選手、福田周平は同年オリックスからドラフト3位指名を受けてプロ入りし、2021年はリードオフマンとしてリーグ優勝に大きく貢献した。

 プロ野球に進むことがすべてではない。それでも、「少しでもうまくなりたい」と願うのはアスリートの本能である。プロ入りへの適齢期を過ぎてもなお、旬の輝きを放つ男たちが社会人のステージにはたくさんいる。

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