藤原や根尾がいた大阪桐蔭戦の快投から3年。ドラフト目前でJR東日本・山田龍聖の気合いも評価も急上昇 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 とはいえ、社会人のエース格の投球内容とは言えなかった。素材のよさは誰もが認めるとはいえ、社会人からプロ入りするには大事な公式戦でチームに貢献するなど、ある程度の実績がほしい。JR東日本はこの試合の敗戦で日本選手権の出場権を逃しており、正直に言えば「山田は10月のドラフト会議までに間に合うのだろうか?」と思わずにはいられなかった。

 それから4カ月近い時間が経った9月下旬。山田はJR東日本の中心的な投手になっていた。

 9月28日、都市対抗野球東京二次予選・明治安田生命戦に先発した山田を見て、その変わりように驚いた。

 2ストライクに追い込むまでは140キロ前後の球速なのに、追い込んでからは躍動感のある腕の振りから140キロ台後半を連発。この日は自己最速の153キロには及ばなかったものの、最速149キロを計測した。スライダー、チェンジアップの精度も高まっており、山田は4回まで明治安田生命を0点に抑えた。

 山田は夏場以降の自身の成長について「変化球でも腕を振って、カウントを取れるようになってきた」と語る。

 6月の鷺宮製作所戦でも目についたストレートの球速差だが、本人に聞くと意図的に差をつけているのだという。

「差をつくったほうが空振りを取れるので、意識しています。(カウントを取る球も)強めに投げていますが、決めにいく時はギアをひとつ上げています」

 そして、なんといっても山田の特徴は雄叫びだ。この日も要所で「オ〜ラ〜!」の叫び声が大田スタジアムに響き渡った。

 ブルペンでは声をあげることはなく、グラウンド外では「静かなタイプ」という山田だが、実戦のマウンドに立つ際は「スイッチを入れる」と本能を解き放つ。そうすることで、思う存分に腕が振れるからだ。

 マウンドで叫ぶタイプの投手は声量が大きくなると余計な力みが出て、かえってボールが走らないケースも多い。だが、山田は声量が大きくなればなるほどボールが走るように見える。そんな感想を伝えると、「それはよく言われます」と笑った。ふだんのブルペンでは球速が140キロ程度しか出ないそうで、気合いと比例してパフォーマンスが右肩上がりに向上するのだ。

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