「4人の上野由岐子が投げている、という感覚がありました」。女子ソフトボール上野が振り返る東京五輪 (4ページ目)

  • Text by Sportiva

――決勝でも1イニングを投げた、最年少で20歳の後藤選手の投球も光りましたね。三振で何度もピンチを切り抜けましたが、あれだけ空振りが取れる理由、今後の課題と期待を教えてください。

「後藤が打たれなかったのは、左ピッチャーで球が速く、相手にデータがまったくない状態だったからです。彼女の能力と相手の情報量を考えれば、今は『抑えて当たり前』。これから研究されていく中で、どれだけ抑えられるピッチャーになれるかが大事になります。

 東京五輪では短いイニングしか投げなかったこともプラスに働きましたね。結果だけ見ればすごく抑えているように見えるけど、真価を問われるのはこれから。言い方が合っているかはわかりませんが、『真摯にソフトボールに取り組んでほしい』と思っています。後藤は若くて向上心があるので心配ないでしょうけど、決して過信せずに一歩一歩、着実に進んでいってほしいです」

――長く日本のエースとして活躍してきた、上野さんだからこそ重みがある言葉ですね。ちなみに、東京五輪で世界一になったチームと、その1年前のチームが対戦したらどちらが強いと思いますか?

「対戦してみないとわからないですね(笑)。ただ、昨年でも五輪があったら確実に金メダルを獲れていたと思います。私の状態も昨年のほうがよかったですし。結果としては、今年でも優勝できましたから、『今年でも大丈夫だったな』という感じです」

――五輪にむけた準備段階、試合中などに、宇津木監督とはどのようにやり取りをしてきましたか?

「監督とはだいたい考えていることが正反対で、細かいことでよく揉めていました(笑)。例えば、私が休みたいと思っている時に監督が『投げ込め』と言ったり、逆に私が投げようと思った時に『休んでいいよ』と言われることもあったり。ただ、それは自分も監督も世界一という目標に必死で向かっていたからこそ、それぞれの意見がぶつかっただけのことだと思います。

"押し引き"みたいなことができる関係でもありましたね。今日は監督の言うことを聞く。今日は自分の意見を通す。お互いに信頼していたから可能だったぶつかり合いだと思いますよ」

(後編:長かったネガティブ時代。「やめたい。投げたくない。何で練習するの?」>>)

■取材協力:株式会社デサント

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