東海NEXUS監督が語る「球女」たちのリアル。プロは消滅でも高校の女子野球部は増加

  • 森大樹●文・撮影 text & photo by Mori Daiki

 野球への理解を示してくれて、トランスジェンダーを公表した自分を自然に受け入れ、のびのびとした環境で働かせてくれる。そんな会社に対して、碇監督は感謝しかないという。

「JR貨物に入って自分らしく生きられているのは、みなさんが"普通"に接してくれて、本当に一度も気まずさを感じたことがないからです。すごく幸せで頑張れる環境になっています。自分ができることは、これからも全力でやっていきます!」

 地元企業の支えに加え、東海NEXUSはオンラインサロンを開設し、コアなファンを巻き込んでチーム運営を行なっている。選手との交流機会はもちろんのこと、試合・練習時の写真撮影やスコア速報などはサロンメンバーが行なう。

 本来はプロとして、野球だけで生活ができることが理想なのかもしれない。しかし重要なのは、本当の意味で地域に密着し、協力を得ながら半永久的に存在し続けられるチームになっていくことである。

 女子野球部を設置する高校は、女子プロ野球リーグ創設当初の5校から44校(創部予定校も含む)に増え、全国大会の決勝が甲子園で開催されるなどの拡がりを見せているが、卒業後に続けられる環境がなければ選手としてのキャリアを終えるしかない。プロが事実上の消滅状態にある今、中部地方で本気で野球を続けたい女子選手たちにとって、日本一を狙える東海NEXUSの存在は身近で新しい目標となり得る。

 今年8月に行なわれた全日本女子硬式野球選手権大会で、東海NEXUSは3位に入った。現状メンバーは11人と少数精鋭だが、昨年10月の全日本クラブ選手権大会で優勝した埼玉西武ライオンズレディースを破るなど、全国でも十分に戦えることを示している。

 チーム名のNEXUSは「繋がり」という意味を持つ。チーム、地域、ファンが一体となった東海NEXUSは愛知の女子野球の星となれるか。


■碇穂(いかり・みのる)
1987年7月20日生まれ、東京都出身。埼玉栄高校2年時に、捕手として2004年女子W杯の日本代表に選出。2009年には日本女子プロ野球機構が実施した第1回合同トライアウトに合格し、同年12月のドラフト会議で京都アストドリームスに入団した。2014年シーズンで現役を引退してからは指導者として活躍。現在は2020年に創設した東海NEXUSの監督を務めている。2021年4月にはトランスジェンダーであることを公表した。

東海NEXUS 公式Twitter>>@TOKAI_NEXUS2020

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