東海NEXUS監督が語る「球女」たちのリアル。プロは消滅でも高校の女子野球部は増加

  • 森大樹●文・撮影 text & photo by Mori Daiki

女子野球・東海NEXUS 
碇穂監督インタビュー 後編 (前編:監督がトランスジェンダーを公表で周囲は予想外の反応>>)

 今年7月、女子プロ野球が3選手の退団を発表して所属人数がゼロとなり、これで"プロ"選手は事実上の消滅となった。ただ、女子野球の灯が日本から消えてしまったのかというと、まったくそんなことはない。

愛知県一宮市を拠点とする女子野球チーム、東海NEXUSの選手たち愛知県一宮市を拠点とする女子野球チーム、東海NEXUSの選手たちこの記事に関連する写真を見る 女子プロ野球は2019年に多数の退団選手を出したが、彼女たちは全国各地に散らばって、それぞれの土地でプレーの場所を作り、競技の普及発展のために活動している。そして中部地方では社会人クラブチーム・東海NEXUS(ネクサス)が発足し、中部女子硬式野球連盟の設立とリーグ戦開催に向けた整備が進められた。

 愛知県一宮市を拠点とする東海ネクサスの監督で、今年4月にLGBTQ+であることを公表したことでも話題となった碇穂(いかり・みのる)は2018年、女子プロ野球・愛知ディオーネの監督としてこの地に降り立った。そして移転初年度に、女子プロ野球日本シリーズを制してチームを年間女王に導いている。

 しかしリーグの方針により、わずか2年で本拠地移転が決定する。地域密着で女子野球を普及させるにはあまりにも短い。ディオーネは愛知に来る前は兵庫・淡路をホームとしており、碇監督と選手たちは地元民とのつらい別れを一度経験していた。

「チームが愛知を離れることになった時、私は残ってリーグ戦の開催や普及活動をやるべきだと思いました。ここに日本一になれる場所を作ってあげたかったんです。

 現状、全国大会で優勝するのはだいたい関東か関西のチームです。いいところまで勝ち進んだとしてもどこかで差が出てしまいます。だからまずは連盟を作って公式戦を行ない、年間を通して試合数を確保することが必要だと思いました」

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