大阪大会で登板ゼロ。大阪桐蔭の怪物・関戸康介が高校最後の夏にかける思い

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 そして自身の状態についてはこう語った。

「コーチの方々とも話をして、精神的にも技術的にも少しずつよくなっている。どんな時でも自分の力を最大限出せるように。とくに気持ちのコントロールが少しずつできるようになってきたかなと思います」

 強調したのはやはり内面だったが、試合前、投手を指導する石田寿也コーチに関戸の状態を確認すると、こんな答えが返ってきた。

「この間の市立尼崎戦では16奪三振で、マックス150キロ。一昨日の神戸弘陵戦でもマックス149キロでビタビタ。状態は上がってきています」

 先の高知戦の試合の合間には、投手の球速や球の回転数、変化量などが瞬時にわかる話題の「ラプソード」を使った測定が行なわれた。専門の担当者が大阪桐蔭の投手や森木の球を計測。その後、関戸と担当者のやりとりも少し聞くことができた。すると話題は、指先の感覚やボールのかかり方といったところへ広がり、関戸の関心がそこにあることがわかった。

 じつは昨年の3月と12月に、関戸は利き腕である右手の中指と人差し指を骨折した。その影響が残っているのかと聞くと、関戸は「そこを言うと逃げているように思われるので......」とひと呼吸置いたあと、「影響がないことはないです」と言った。

「指先の感覚が人よりも少し弱くなったのかなと思うところがあって、いろんな人の知識を得ながら、少しでも感覚がよくなるようにしていきたいと、いろいろやっています」

 精神的なものと感覚的なもの──2つの課題を抱えながら、最後の夏の大会は目前に迫っていた。高知戦の翌日の東海大相模戦でもまずまずの投球だったと聞き、期待を持って夏の登板を待ったのだが......。

 そして最後に話を聞いたのは8月1日、大阪大会決勝で勝利し甲子園を決めた試合直後だ。サヨナラ勝利という激闘のあと、高揚した顔が並ぶベンチ前で関戸はいつもどおり、落ち着いた雰囲気で記者の質問に答えていた。大阪大会を振り返って「どうだった?」と向けると、「状態が上がらない感じでした」と返ってきた。

「正直、周りのピッチャーの状態もよかったですし、投げたとしても1、2イニングくらいあるかどうか......という感じでした」

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