大阪大会で登板ゼロ。大阪桐蔭の怪物・関戸康介が高校最後の夏にかける思い (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

「自分の野球人生のなかで、一番悪いくらいのピッチングでした。技術的にも気持ちの面でもうまく持っていけないなか、(チームが)負けている状況でマウンドに上がったので、余計に抑えようと、気持ちだけが先走って技術がついていかない感じでした」

 あまりの乱れ方に、肩やヒジに不安を抱えての投球だったのかと思ったが、「それはなかったです」とキッパリ否定した。ただ、関戸があげた"乱調"の理由には、やや納得できない部分があった。なぜなら、小学校から大舞台を経験し、常に高い注目を浴びてきた投手。それがあそこまで崩れるというのは、精神的なものとは別の理由があるのではと思ったからだ。それでも関戸はあくまで"それ"を強調した。

「チームをどうすれば勝たせられるのかと思うなか、不安を持ったままマウンドに上がってしまって......自分の弱さが出ました」

 ちなみに、今年春の大阪大会で関戸は初めて背番号「1」をつけた。松浦慶斗を鍛えるためメンバーから外したこともあるが、ほかにも好投手がいるなかでのエースナンバー。状態が上がっているのかと思ったが、その逆だった。

「大会前はそんなによくなかったんです。でも、背番号1をもらったからこそ、それまで以上にしっかり練習に取り組んで、自分が大きく変わらないといけないと思いました」

 しかし、大阪大会後の近畿大会では背番号「11」となり、チームは優勝を果たしたが関戸の登板はなかった。西谷浩一監督は関戸について「しっかり準備はしています」と繰り返したが、登板機会はやってこなかった。

 次に話が聞けたのは6月末。高知のエース・森木大智との対決に注目が集まった練習試合後だった。翌日予定されている東海大相模戦で先発予定だったため関戸は投げなかったが、報道陣に囲まれて話をした。

 中学時代に何度か対戦していた森木については、このように語った。

「すぐに打者を追い込んで、カウントをつくっていくコントロールとか、ピッチングが上手だなと。久しぶりに見ましたけど、すべてに置いて成長していて、あらためてすごい投手だと感じました」

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