愛工大名電・田村俊介が堂々の二刀流宣言。指揮官も「大谷翔平を目指せ」と太鼓判

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 それは力強い宣言だった。

「両方やりたいと考えています」

 8月11日、全国高校野球選手権大会の初戦で敗れた愛工大名電の田村俊介は、卒業後はプロ野球に進みたい希望を明かした。その流れで「投手と野手、どちらでプロに行きたいと思っていますか?」と尋ねると、田村は「二刀流」を宣言したのだ。

最速145キロを誇る愛工大名電のドラフト候補・田村俊介最速145キロを誇る愛工大名電のドラフト候補・田村俊介この記事に関連する写真を見る 思わず「投手と野手の両方やりたいということですよね?」と念を押してしまったが、本人は「はい」と首肯した。続けて「プロでどんな存在になりたいですか?」と聞くと、田村は「チャンスに強い選手になりたいです」と答えた。

 投手としては最速145キロをマークするサウスポー。打者としては高校通算32本塁打のスラッガー。投打とも豊かな才能を誇る田村だが、今夏の甲子園・東北学院(宮城)戦に限って言えば投打で明暗がはっきりと分かれた。

 投手としては先発マウンドに立ちながら、初回に3四死球を許す不安定な立ち上がり。3回裏に一死一、二塁のピンチを招いたところで、同じくドラフト候補である右腕の寺嶋大希にマウンドを譲った。

 結果的にこの回に3点を失ったことで、愛工大名電は波に乗れなかった。倉野光生監督は「守りでリズムをつくり、中盤から後半で点をとっていく。愛知大会ではできていた流れをつくれなかった」と語っている。

 一方、3番打者としての田村は2安打1打点と気を吐いた。第4打席では高めに浮いたチェンジアップを甲子園球場の右中間スタンドに叩き込んだ。

 本人は自身の打撃で重視しているポイントを「ピッチャーからくるボールのラインにバットを入れること」と語る。軸がブレず、リストの柔らかいスイングは高校生とは思えなかった。

 現時点では、どちらかと言えば田村の打撃を高く評価するスカウトが多いようだ。そんな田村が二刀流へのこだわりを見せたのは意外に思えた。そもそも田村は、愛工大名電で「打撃を磨こう」という志を持って進学していたからだ。

 京都出身の田村は、小学校卒業後に高知へと渡り、名門校の明徳義塾中に進んでいる。関戸康介(現・大阪桐蔭)と二枚看板を張り、投打に活躍していた。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る