サヨナラ逆転本塁打を放った横浜の1年生・緒方漣の強心臓。「あいつならやってくれる」 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 甲子園の2打席目で送りバントを失敗しても、「もう1回打席に立つので、下を向いたら次のプレーができないと思った」とすぐに気持ちを切り替えた。

 サヨナラホームランという最高のパフォーマンスができた要因は何かと聞くと、緒方はこう答えた。

「徹底して『チームのために』という思いでプレーできたので、そこがよかったのだと思います」

 広島新庄の宇多村監督は試合後、時に笑顔を浮かべながら選手の健闘を称えた。

「最後は緒方くんのホームランで終わりましたけど、選手たちはこのすばらしい舞台で持ち味を発揮してくれたと思います。30人の3年生がいるんですけど、非常に仲がよくて......なんとしてでも勝たせてあげたかったなと。もう一度甲子園で試合をし、1日でも長く3年生とまた試合がしたかったです」

 広島新庄としては、ほとんどミスのない完璧な試合運びだったはずだ。だが、野球はわずか一瞬で天地を行き来する。あらためて、一球の恐ろしさを教えられた試合だった。

 殊勲の緒方は今後の意気込みを聞かれ、こう答えている。

「広島新庄さんの分までしっかりと戦って、臆することなく正面から向かっていけたらと思います」

 おそらく、今後も高校野球界で語り継がれる一打になったに違いない。その際には、広島新庄がいかに強かったかもセットで語られてほしいと願わずにはいられない。

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