静岡高のエースに感じた中学時代とのフォームの違い。初戦敗退も高須大雅の未来は希望に満ちている

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 静岡高のエース・高須大雅(ひろまさ)が甲子園球場のマウンドに立ち、投球練習を1球投げた時点で違和感を覚えていた。

---- こんな投げ方だったかな......。

 今から3年前、中学軟式球界は史上稀に見る逸材投手の続出に沸いていた。高知中の森木大智(現・高知)は中学生にして最速150キロをマーク。他にも仙台育英秀光中の伊藤樹(現・仙台育英)や明徳義塾中の関戸康介(現・大阪桐蔭)など、140キロ台を軽く超える右腕が次々に現れた。

静岡大会37イニング無失点の高須大雅だったが、甲子園では新田に初戦敗退を喫した静岡大会37イニング無失点の高須大雅だったが、甲子園では新田に初戦敗退を喫したこの記事に関連する写真を見る そんななか、「静岡にもしかしたら3〜5年後に森木たちを追い抜くかもしれない原石がいる」という情報を耳にした。発信源は静岡県の野球ファンの間で知らぬ者はいない野球誌『静岡高校野球』を刊行している、ライターの栗山司さん。その栗山さんが強く推した投手こそ、磐田東中の軟式野球部に在籍した高須だったのだ。

 当時、私は『中学野球太郎』という雑誌で有望中学生投手と打者として真剣勝負する企画を担当していた。そこで、栗山さんを通じて磐田東中の高須と対戦させてもらうことになった。

 対戦前、高須のもとへ挨拶に出向いた私は、いきなり衝撃を受けた。高須の指が尋常ではないほど長かったのだ。

 手首から中指までの長さを測ると、21センチもあった。大人の私(身長175センチ)は18センチだったので、3センチも長い。さらに靴のサイズを尋ねると、30センチだという。当時、身長183センチ、体重67キロの高須に「これからもっと身長が伸びるかもしれないね」と声をかけた記憶が残っている。

 打席に入ってみる。マウンドに立つ長身痩躯の高須は、ノーワインドアップからリズミカルなモーションで体重移動に入り、腕をタテに振り下ろす。球速にすれば130キロ前後。森木や伊藤と比べれば、数字だけならかなり落ちる。

 だが、打席で高須のボールを体感した私は、当時こう記している。

<漢字2文字で表現するなら、森木投手は「圧倒」、伊藤投手は「成熟」。そして高須投手は「未来」。たしかに現時点での投手としての能力や実績は、彼らには及ばないかもしれない。それでも近い将来はわからない。もちろん、森木投手や伊藤投手も伸びしろを残しているけれど、高須投手の伸びしろはまったく底が見えない。体の成長が止まり、大人の肉体になり、投球感覚がフィットした時。とてつもない投手に成長しているかもしれない>

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