高校野球史上初の東京ドーム開催。選手たちは何を思い、監督たちはどう対策を立てたのか

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 屋外球場よりも、明らかに音が大きく反響する。東京ドームで金属バットの「キィン!」という打球音を聞くこと自体、新鮮に感じられた。

 2021年夏の高校野球・東西東京大会は、東京五輪の影響で神宮球場が使用できなかった。そのため、7月31日からの準決勝以降で高校野球として初めて東京ドームを使用することになった。

今年の東西東京大会は、東京五輪の影響で準決勝以降は東京ドームでの開催となった今年の東西東京大会は、東京五輪の影響で準決勝以降は東京ドームでの開催となったこの記事に関連する写真を見る「(準々決勝の)狛江戦で勝った時に『やった、これで東京ドームが決まった!』って、夢のような感覚でした」

 そう語ったのは、16年ぶりに準決勝進出を決めた世田谷学園の主将・石郷岡一汰である。東京の高校球児にとって学生野球の聖地・神宮球場でプレーするのは、ひとつのステータス。だが、神宮球場が使えない今夏に限っては、東京ドームという非日常空間で野球ができる喜びがあった。

 甲子園常連校の日大三も、東京ドームで試合をするのは初めて。百戦錬磨の小倉全由監督は言う。

「やっぱり天井が見づらいので、『みんな、気をつけてやろうな』と声をかけました。自分なんか、フライが飛んで上を見るとボールが見えなくなっちゃうなぁ......と感じていました」

 東京ドームの天井は白っぽい色をしており、快晴のデーゲームでは天井近くまでフライが上がると打球を見失いやすい。プロ野球、社会人野球、大学野球と東京ドームのデーゲームで野手がフライを見失うシーンは珍しくない。平凡なフライが試合の結果を左右しかねないだけに、各校とも試合前にはフライ対策に注力していた。

 とくに入念な準備をしていたのは、西東京の優勝候補・東海大菅生だ。試合前のシートノック終盤になると、どのチームもフライを何本も打ち上げる時間帯がある。東海大菅生はなんと28本ものフライを打ち上げ、打球の見え方をチェックしていた。若林弘泰監督は言う。

「自分も外野で見てみましたが、こんなに見づらいんだな......と。ノック時間が(従来の7分間から10分間に)増えた分は、全部フライに費やしました」

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