福岡・真颯館の146キロ左腕はプロ注目の逸材。別人のような進化→甲子園まであと1勝 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 チームメイトからも「ケツでかいな」と驚かれるそうだ。重厚な下半身を手に入れたことで、しなやかな腕の振りがより生きるようになった。

 松本の投手としての最大の武器は、スピードガンの表示以上に速く見えるストレートだろう。体重移動がスムーズで、ボールを捕手寄りでリリースできる。

 本人は「リリースまでは脱力して、ボールを前で離す時に100パーセントの力を出せるようにするイメージ」と語る。140キロ前後の球速でも空振りが奪える要因は、ここにある。

 準決勝で対戦した筑陽学園は県内屈指の強打線だった。準々決勝では優勝候補筆頭の福岡大大濠を破っており、勢いにも乗っていた。筑陽学園の江口祐司監督は試合前、「松本くんとウチの打線の勝負」と見ていたという。

 かといって、大物打ちで攻めるわけではない。つけ込むスキがあるとすれば、松本の制球の不安だったと江口監督は明かす。

「揺さぶりをかけてボール先行になったら、動こうと考えていました」

 バントを仕掛ける際も、松本に捕らせるゴロを転がすよう打者に指示を出した。炎天下で少しでも松本を動かし、消耗させたかったからだ。だが、江口監督は「結果的に裏目でした」と語る。

「バント処理でも松本くんは一歩も動かずにさばいてしまう。ボールカウントが先行することもないし、こちらがリズムを変えようとしてもブレない。ごまかしが効かない、いいピッチャーでした」

「松本の制球が粗い」という評価は、かねてより県内外でささやかれており、本人も「フォアボールから崩れることが多かった」と認めている。今夏にかけて別人のような進化を遂げた要因を、松本はこう語った。

「フォアボールが多い時は投げる前から体に力が入ってました。でも今は投げる前は脱力を心がけています。飛ばしすぎず、緩めすぎず、8割くらいの力加減で。決めにいく時だけ全力で投げるようにしています」

 甲子園まで、あと1勝。すでにプロ志望を表明している松本は、「菊池雄星さん(マリナーズ)みたいなすごいピッチャーになりたい」と意気込む。次々に逸材を輩出する福岡に現れた、新たなサウスポー。その雄姿が甲子園で見られるかどうかは、27日11時プレーボール予定の西日本短大付戦にかかっている。

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