「怪物中学生」と呼ばれた高知・森木、甲子園へのラストチャンス。今夏の仕上がりにスカウトは「すごくいい」 (3ページ目)

  • 寺下友徳●取材・文 text by Terashita Tomonori
  • Photo by Terashita Tomonori

【失わなかった「軸の意識」。そして「真の怪物」へ】

 それでも森木、濵口監督、チームが見失わなかったこと。それは「軸の意識」だ。高知中時代は投げた後にバックステップを踏むほど思い切り腕を振る力投スタイルだった森木だが、濵口監督は中学時代から「このままではケガにつながる」とフォーム修正に着手。森木自身もレッドコードなどを用いた軸を安定させる身体づくりを土台に、「力感なく最大限出力する」形を地道に取り組んできた。

 かくして迎えた2021年春。これまではまりそうではまらなかったラストピースがついにはまる。2月に左足首を負傷したことで、3月中旬の復帰後は強く踏み込んでいた左足を静かに置くようになった。それが功を奏し、「力を入れなくても強いボールがいくようになりました」と森木。春の高知大会決勝戦ではリリーフで自己最速152キロを出し、続く四国大会でも先発で151キロをマーク。決勝戦では最終回のマウンドに立ち宿敵・明徳義塾をねじ伏せると同時に、ついに世代最速(当時)となる154キロを計測した。「力感なくあのスピードが出せるのはすごい」「ドラフト1位は確実」と、NPBスカウト陣の評価も総じて高いものだった。

 進化はいまだに続いている。7月3日に大阪府内で行なわれた大阪桐蔭との練習試合で森木は先発で7回を投げ9安打3失点ながら、最速152キロをマークしつつ全国屈指の強打線から11三振を奪取。投手出身のNPBスカウトが「気負っていて身体の開きが早い中でもこれだけ投げられたのは大したもの」とゲームメイク力を高く評価すれば、別の投手出身のスカウトは「プロに入ってから変化球を覚えるのは実際難しいものだけど、この時点で変化球を操れるのはすごくいい」と、スライダー、スプリット、チェンジアップ、カットボールなど多彩な変化球を用いた投球内容のよさを指摘した。

 森木自身もその翌日の履正社戦後に学校を通じて「全国レベルのチーム、特に左打者と対戦できたことはいい勉強になった」とコメントを残すなど、さまざまな収穫を得ながら最後の夏に挑もうとしている。

 7月18日、全国49大会最後に開幕した高知大会において第2シード・高知の初戦は22日の予定だ。「中学野球界の怪物」から「真の怪物」へ。甲子園、そしてその先にある、チーム全員の目標「全国制覇」へ。3年前の夏、坊っちゃんスタジアムで始まった物語は、いよいよクライマックスを迎える。

【profile】 
森木大智 もりき・だいち 
2003年、高知県生まれ。中学3年時の公式戦にて軟式球で150キロをマークし、注目される。高校ではケガに苦しむ時期を経て着実に成長。最速154キロの速球に多彩な変化球を織り交ぜる。今秋ドラフト上位候補のひとり。

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