松坂大輔も音を上げた。野球部OBが振り返る小倉コーチの猛練習と横浜高校あるある (3ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo
  • 写真/山本哲也氏提供

当時、山本氏が使っていたノート(写真/山本氏提供)当時、山本氏が使っていたノート(写真/山本氏提供)この記事に関連する写真を見る――小倉コーチとのエピソードは、まだまだ出てきそうですね。

山本 小倉コーチにえらい怒られたこともよく覚えています。僕らは練習がしたくないので、小雨の日なんかはとにかく「雨、降ってくれ!」と願っていました。グラウンドがびしょびしょだと練習が中止になって館内で筋トレするだけでいいですから。

 時には3年生の指示で1年生がグラウンドに先回りして、ホースで水をまくこともありました。それで「グラウンドが使えません!」と報告するんですが、たまたま小倉コーチに見つかったことがあって、えらい怒られました(笑)。結局、部員全員でスポンジを使って、水を吸い取る作業をして。「1、2年だけで練習するから、お前ら(3年生)はいい」と言われましたよ。

 朝は必ず寮のテレビで天気予報を見ていましたし、授業中も「雨降んねぇかなぁ」って思いながら外をずっと眺めていました。雨が降った時のうれしさは、今でも忘れられません(笑)。

――部室や寮での生活など、練習以外のエピソードはありますか?

山本 僕らは寮でしたけど、部室は"通い組の城"でした。通い組はみんなが部室で遅くまで残ってワイワイやってましたね。通い組の1年生は、朝早く来て先輩のグローブなどを持って横一列に並びます。通い組の3年生が登校してくると、「おはようございます!」と挨拶をして用具を渡すんですが、ビッとしていて異様な光景でした。横浜高校の部員間での用語で「ビッとしてる」というのは、「しっかりしてる」という意味なんですけど、それは最高の褒め言葉なんです。

「解禁制度」というのもありましたね。何かの課題をクリアすると、やれることが増えていくという。例えば寮生が食事をする時、食卓にはしょうゆやソース、マヨネーズなどがある。だけどそれらは3年生が使うので、1年生は使ってはいけないんです。そういう伝統だったんですよ。ただ、グローブやスパイクを磨いたり、マッサージをしたり、返事に元気があったりすると、「頑張ってるから、これはOK」と、調味料の使用を許可されていくんです。

 他にも、アンダーシャツの半袖解禁、ジャージのチャックを下ろしていいとか、いろいろありました。もちろん昔の話ですし、今は変わっているでしょうね。僕たちにとってはもはや、いい思い出です。

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