バリバリのドラ1候補に急浮上の大学生左腕。隅田知一郎が頭ひとつ抜けた

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 スプリットの封印は、マスターしたばかりのツーシームの精度を高めるため。相手校にデータのない球種でリーグ戦を優位に戦える目論見もあった。

 上武大戦では、すべての球種を解禁した。課題だった「スライダーの後のストレート」も大きな進境があった。

「体をギリギリまで開かないように我慢して、体をタテ振りするイメージでストレートを投げていました。まだ完成とまではいきませんが、今までの自分にはない修正ができました。確実にステップアップできています」

 上武大戦で最速148キロを計測したストレートも、打者に向かって加速するような強烈なキレがある。今永昇太(DeNA)の立ち姿を参考にした力感のない投球フォームに、ピンチの場面での勝負度胸のよさ。この総合力の高さは、もはやドラフト1位候補と呼ぶにふさわしい。

 ただし、上武大戦では誤算がひとつあった。2回裏に主砲のブライト健太に浴びた決勝本塁打だ。

 西日本工業大サイドは今春の関甲新リーグでMVPを受賞したブライトを力でねじ伏せ、チームに勢いを呼び込もうと考えていた。試合前々日には、武田監督が「インコース3ついけ」とバッテリーに指示している。

 ところが、右打者であるブライトの懐を突き刺すはずだったストレートは、初球ボールに。2球目は甘く入って、レフト線への大ファウル。3球目はさらに甘く入り、豪快なスイングで左中間スタンドに運ばれた。

 隅田は「ストレートで勝負するからには厳しいところを攻めないといけないのに、ボール2~3個分甘く入ってしまった」と悔やむ。一方で武田監督は、このストレートこそ隅田の伸びしろだと考えている。

「真っすぐはまだ伸びるはずです。角度ももうひとつ上から投げられると思います」

 これから秋のリーグ戦、そしてドラフト会議に向けて戦いは続いていく。ただ、西日本工業大は卒業後も硬式野球を続ける予定の隅田とアンダースロー右腕の下山泰輝以外の4年生は、今春限りで引退する。

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