大学選手権に出ずともプロ注目の逸材。白鴎大・中山誠吾は「和製ジーター」となるか

  • 永田遼太郎●文・写真 text & photo by Nagata Ryotaro

 ウエイトトレーニングでパワーをつける一方で、アジリティトレーニングにも励み、瞬発力は格段に増した。

 今年春のリーグ戦では、久しぶりのショートだったにもかかわらず、67回の守備機会で失策はわずか2つ。目標に掲げていた「年間ノーエラー」は果たせなかったが、高い守備率を発揮した。

 中山は「プロ野球選手になりたい」という夢を叶えたい一心で、幼少の頃から野球に打ち込んできた。修学旅行や文化祭、体育祭といった学校行事にもほとんど出た記憶がないという。

 高校3年の秋、同級生の石川翔が中日からドラフト2位で指名されたが、中山にはプロから声はかからなかった。

「これまで自分よりすごい選手をたくさん見てきましたし、高校の時もプロを目指していたんですけど......先に石川にプロに行かれて、その時も素直に喜べなかったですし、自分がみじめだと思ったこともありました」

 なんとしてもプロの世界に飛び込みたい。コロナ禍で揺れた昨年春も、中山は自主練習に明け暮れた。

「コロナ禍の自粛期間は、むしろ自分にとってプラスでした。『このまま野球ができなくなっちゃうんじゃないか』というよりは、『今のうちに差をつけておこう』と。今がチャンスだと思って、練習に励んでいました。自分は特別センスがあるわけじゃないので、人の何倍も努力しないといけない」

 そんな中山には白鴎大に来て、影響を受けた先輩がいる。2学年上の大下誠一郎(現・オリックス)だ。

「誠一郎さんは自分の部屋にもよく来てくれて、相部屋の山田和哉(現・JFE東日本)さんと3人でよく練習しました。野球への意識というか心構えが、やっぱりほかの人と違うところにあって。そういう姿を間近で見られたのは財産になったと思います」

 また、プロ入りして恩返ししたい人がいる。父の誠さんだ。

 中山がショートにこだわるのも、大学、社会人でショートを守っていた誠さんの影響である。中学時代は父が監督を務める栃木ヤングベースボールクラブで守備のイロハを叩き込まれた。

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