元ソフトバンク島袋洋奨が母校で指導者に。甲子園優勝経験を育成に生かす (2ページ目)

  • 加来慶祐●文・写真 text & photo by Kaku Keisuke

 現在の高校野球は、複数投手制が主流となり、1週間500球ルールなど、投手をケガから守るさまざまな施策が打ち出されている。

 島袋自身、2010年の甲子園で春は689球、夏は783球を投げ、大学時代にも登板過多による影響で故障した経験がある。

「好投手を何枚もつくらないといけないし、そういう指導が求められていると思います」

 そうは言うが、島袋が選手たちに求めているのは"投げ切る力"だ。

「何枚もつくるといっても、40〜50球しか投げられない投手を複数つくるということではないんです。あくまで前提としてあるのは完投能力。9回を投げ切れる投手を育てることを主眼に置いています」

 高校生の投手を育成、強化する道筋は、島袋のなかで確立されつつあるようだ。

「まずはボールの強さですね。決して『低め、低め』と意識させず、まずは自分の持っている球に強さを求めなければなりません。強いボールを投げられるようになれば、次にその再現性を高める。それができて初めて、コーナーへコントロールする技術を身につけていけばいい」

 そしてマウンドに立つ投手は、チームの核としての自覚が求められる。少なくとも「エース」と呼ばれる投手には、マウンドの立ち居振る舞いやパフォーマンス、チームを引っ張っていくという気概が必要になる。

 もちろん、島袋はそれだけのプライドを持ってマウンドに上がっていたという強い自負がある。だからこそ、「エースはチームメイトから信頼を勝ち取るためにも、相手を圧倒しなければいけないんです」と言うのだ。

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 九州大会の大崎戦で三振の山を築いた山城は、相手ベンチからの「真っすぐだけだぞ!」の声に感情をむき出しにした。その姿は、島袋の目にはいつも以上に相手打線を威圧しているように映った。こうした闘争本能こそが、島袋が母校に持ち帰った最大の手土産だといってもいい。

「(山城)京平はまだまだ幼い部分がありますが、力的には将来が本当に楽しみな投手です。これだけの投手ですから、当然、京平の言動を下の世代の子は見ています。それをしっかりとさらに下の世代にも受け継いで、伝統化していければいいなと思いますね」

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