横浜高時代と変わらぬ福永奨の姿勢。プロ入りへ「人間力」をアピール (3ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 この冬、福永は自分自身と向き合った。自分のプレーの何がよくて、何が悪いのか。自分の弱さを直視するのはつらい作業だったが、福永は「握り替えや足の運び、上体の力みなど、改善できるところはありました」と課題克服に取り組んだ。

 栄養摂取やトレーニングも見直し、身長176センチ、体重87キロとたくましい肉体をつくり上げた。ただ体重が増えただけではなく、50メートル走のタイムが6秒4から6秒2に縮むなど「動ける体づくり」にこだわった。

 こうした積み重ねが自信となり、今の福永を支えている。

「盗塁ひとつを刺すのに何千球、何万球と投げ続けて、自分と向き合ってきました。バットも同じように振ってきて、今は打席に入っていても楽しいです。早く打席に立ちたいとすら思います。やるべきことをやっていないと、そういう言葉は口に出せませんから」

 高校時代から4年が経った今も、福永の口から「楽しい」という言葉が漏れた。「戦国東都」と称される、大学屈指のハイレベルな戦いに身を置いてなお、福永は野球を楽しみ続けている。

 東都大学リーグには、中央大に古賀悠斗という捕手のライバルがいる。守備型の捕手という点でも福永とは被り、何かと比較される存在である。

「古賀は1年生から試合に出ていますし、その点ではすでに負けています。でも、いいキャッチャーが近くにいるからこそ負けたくありませんし、勝ってこそより注目していただける。自分のいい面を試合で出して、チームを勝利に導いた結果、古賀よりも上と評価していただけたらいいなと考えています」

 どうして、退路を断ってまでプロ野球選手になりたいのか。そう聞くと、福永は少し考えてからこう答えた。

「単純な話で恥ずかしいんですけど、これからも地元の人たちに応援される選手であり続けたいんです」

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