横浜高時代と変わらぬ福永奨の姿勢。プロ入りへ「人間力」をアピール (2ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 3月29日の東都大学野球リーグ開幕日。亜細亜大との初戦で福永は印象的なパフォーマンスを見せた。1点を先取された1回表、二死一塁の場面で亜細亜大・天井一輝の盗塁を完璧な二塁送球で刺している。

 課題の打撃でもタイムリー二塁打を放つなど、4打数2安打1打点の活躍。チームは8対1で難敵を下し、幸先のいいスタートを切った。

 試合後、会見場に現れた福永はやや上気した様子でこう語っている。

「去年は、自分は亜細亜さんとやらせてもらって、悔しい結果でした。去年は走られまくって、今年は『一発目』にこだわってやってきました。一発目の盗塁を絶対に刺す。絶対にアウトに取るんだと、こだわってきたことができてよかったです」

 じつを言えば、私は昨秋の福永のスローイングを見て、「肩が弱くなったか、肩かヒジを痛めているのか?」と感じていた。高校時代の二塁に向かって加速していくようなスローイングは影を潜め、コントロールもばらついた。ところが、本人に聞くと「ケガは一切ないですし、肩が弱くなった実感はまったくありません」ときっぱりと答えた。

 それなのに、なぜ昨秋は盗塁を刺せなかったのか。福永はこう考えている。

「高校時代はノックから思い切り投げていれば、相手は全然走ってきませんでした。でも、大学はいくら捕手の肩が強くても走ってきます。高校では二塁までの送球タイムばかり考えてやっていましたけど、大学はいくらタイムが速くてもアウトにならなければ意味がないんです」

 アウトにできない。その焦燥感が福永を蝕(むしば)み、空回りしていった。福永は「自分の持ち味をすべて潰されて、そのままズルズルいってしまった」と昨秋を振り返る。國學院大の鳥山泰孝監督は「走られたのはピッチャーがモーションを盗まれたところもある」と福永をかばうが、福永は「自分が相手チームに『いける』という雰囲気を出してしまっていた」と自身を責めた。

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