大阪桐蔭、チーム崩壊の危機。ナインの鼻をへし折ったセンバツの敗戦 (2ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Nikkan sports

「今の桐蔭もそういう部分があると思うんですけど、当時から選手を締めつけずに尊重するという考えはありました。当時は無名校でしたけど、甲子園に出るという目標はみんな一緒でした。ただ、僕らの代はかなり個性が強かった。だから、自由にさせるなかでも締めるところは締めないと、チームがバラバラになる可能性がありました。それをミーティングだったり、僕が個人で話し合ったりして、なんとかまとめていった感じですね」

 そんな主将が牽引するチームは、創部4年目にして初めての甲子園となるセンバツ出場を実現させた。そして初戦の仙台育英(宮城)戦では、主砲・萩原がホームランを放ち、エースの和田はノーヒット・ノーランという衝撃の甲子園デビューを飾った。

 箕島(和歌山)との2回戦でも勢いは止まらず、2点を追う8回に玉山の同点二塁打など、一挙4点を奪い逆転勝ち。チームのムードは最高潮に達した。

「もう優勝しかないやろ!」

 メンバーのほとんどがそう信じて疑わなかった。準々決勝の相手が「優勝候補筆頭」の天理を撃破した松商学園(長野)でも、自信が揺らぐことはなかった。

「長野の高校? 余裕やろう!」

 ところが、そんな慢心をあざ笑うかのように、松商学園のエース・上田佳範の術中にはまり、大阪桐蔭打線は沈黙する。ストレートとカーブ、そしてナックルを駆使した投球に翻弄され、安打はわずか5本。0−3の完敗だった。

松商学園のエース・上田佳範から三振を奪われ天を仰ぐ大阪桐蔭・玉山雅一松商学園のエース・上田佳範から三振を奪われ天を仰ぐ大阪桐蔭・玉山雅一 全国制覇を疑わず、楽勝だと思っていた相手に足元をすくわれた。そのダメージは大きかった。玉山がセンバツ後のチーム状況を明かす。

「センバツは僕も含め、みんな目立ちたい一心でやっていたと思うんですよ。そこで負けると思っていなかった相手に負けて、だんだんと歯車が噛み合わなくなってしまって......センバツが終わってからは練習試合でも勝てなくなり、チーム力が落ちていることは明白でした。みんな余裕がなくなってもうて」

 低迷するチームのなかでとくに重症だったのが、ふたりの「1番」だった。

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