中京大中京・畔柳亨丞の投球を指揮官も称賛。中日ドラ1の高橋宏斗と「遜色ない」

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

『特集:球春到来! センバツ開幕』

 3月19日、2年ぶりとなるセンバツ大会が開幕した。スポルティーバでは注目選手や話題のチームをはじめ、紫紺の優勝旗をかけた32校による甲子園での熱戦をリポート。スポルティーバ独自の視点で球児たちの活躍をお伝えする。

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 本人が尊敬する則本昂大(楽天)が憑依(ひょうい)したかのような、鬼気迫る投球だった。

 中京大中京(愛知)のエース右腕・畔柳亨丞(くろやなぎ・きょうすけ)は大会前から小園健太(市和歌山)らと並び屈指の逸材と評された。3月25日の大会6日目、満を持して登場した畔柳は専大松戸(千葉)から12三振を奪い、6安打完封に抑えた。

センバツ初戦の専大松戸戦で完封勝利を挙げた中京大中京の畔柳亨丞センバツ初戦の専大松戸戦で完封勝利を挙げた中京大中京の畔柳亨丞 中京大中京の高橋源一郎監督が「ボールが強い。出力が高いので、うなるようなストレートになる」と評価する快速球は、最速147キロをマーク。自己最速の151キロには及ばなかったものの、捕手の加藤優翔のミットを突き上げるような球威・勢いは大会ナンバーワンと言っていいだろう。

 畔柳はかつて自身の球質について、「キャッチボールから常にキレのいい真っすぐを意識している」と語っていたことがある。

 速球と約30キロの球速差のあるカーブ、横に滑るスライダーを使いつつ、畔柳本人が「今日の変化球で一番よかった」と語るチェンジアップが冴え渡った。1学年上の先輩であり、畔柳がもっとも身近な目標と崇める高橋宏斗(中日)から教わったツーシームの握りにアレンジを加えて習得したボールだ。人差し指と中指で浅く挟み、抜く感覚で投げる。おもに対左打者への決め球として使っている。

 身長177センチ、体重87キロの体格はどちらかと言うとずんぐりとしており、マウンドで大きく見えるわけではない。大物投手らしい、しなやかさがあるわけでもない。リリースする際にステップする左足が突っ張り、一塁側から見ると身体が漢字の「入」のような形になる。決して見栄えのするタイプではないのだが、ボールには爆発力がある。

 昨秋の投球を見て、則本に雰囲気がよく似ていると感じたら、思いがけず本人の口から目標とする投手として則本の名前が挙がった。

「気迫を前面に出して、好きなピッチャーです」

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