高校野球の儀礼的なものをなくす。早大の「補欠主将」が聖カタリナで取り組んでいること (4ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

【石川県の教員を経て故郷へ】

 越智は大学卒業後に教員免許を取得し、2006年に石川県の公立高校の教員になった。11年間、野球部の監督を務めたのち、2016年に女子校だった聖カタリナ女子高校が男女共学になって(聖カタリナ学園と改称)野球部が創部されると、生まれ故郷の愛媛県に戻って監督に就任した。

 創部1年目の2016年夏の愛媛大会で、1年生だけでベスト8まで勝ち上がり、話題を集めた。越智もメンバーのひとりとして3度甲子園に出場した愛媛県の強豪、宇和島東時代の恩師・上甲正典と同じように、創部間もない野球部を甲子園に連れていくことを期待されたが、簡単にことは進まなかった。2018年の春季四国大会で準優勝したものの、その夏の愛媛大会は3回戦で今治西に敗れた。

「1期生は、どんな野球部かもわからないのに勇気を持って入ってきてくれました。今では3年生が2年生を、2年生が1年生を教えるという流れができていますが、最初はうまくいかないこともたくさんありました。

 新入生が入ってきて競争が生まれ、相手には勝たなきゃいけないし、チームでの競争もある。重い鎖をつけて戦っている時期がありました。苦しさの中で頑張ってきたことが、今につながっていると思います」

 越智には、宇和島東、早稲田大学で積み重ねた選手としての勝利体験があり、石川県の公立高校での指導経験がある。もちろん、選手に求める形はあるが、縛りつけることはしなかった。

「まずは、グラウンド整備の仕方から。マナー面はしっかりと教えましたが、あまり選手のカドを取らないように心がけました。まわりを削ると小さくなってしまうので、スケールを大きくしようと思って。チャンスでもバントはせず、ダブルプレーもOKという大味な感じでチームをつくっていきました。はじめはしんどかったですが、今は目指す形ができつつあります。少しずつ、負けないチームに近づいているように思います」

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