高校野球の儀礼的なものをなくす。早大の「補欠主将」が聖カタリナで取り組んでいること (2ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

【ひとりひとりが結束して組織ができる】

 キャプテンを任された以上、目指すのはリーグ優勝。その先には、春ならば全日本選手権、秋には明治神宮大会がある。だが、新米のキャプテンの目に、全国優勝は見えていなかった。

「春のリーグ戦で優勝することしか頭にありませんでした。現実的に、目標はそれだけでした」

 早稲田大学、慶応義塾大学、明治大学、法政大学、立教大学、東京大学によって争われる東京六大学。東京大学を除く5校には、甲子園で活躍した球児、腕に覚えのある選手たちが集まってくる。そのレベルは高く争いは厳しく、簡単に優勝には手が届かない。

 キャプテンに就任した越智は自分たちのチームを冷静に分析しながら、できるところから手をつけていった。

「僕たちが入学した時点で、厳しすぎる上下関係はなくなっていました。それでも、練習の準備や雑用をするのは下級生だったんですが、『準備も後片付けも、やれるやつがやろう』と言いました。先輩、後輩にかかわらず、みんなで練習の準備をして、グラウンド整備もやる。大きく変えたという意識ではなく、『当たり前のことを当たり前に』と思っただけです」

 それは、野村監督が常日頃から口にしていることを行動に移しただけだった。

「いつも野村監督がおっしゃっていることを、言葉にしてチームに浸透させることを心がけました。考え方については、同級生のスタッフといろいろな話をしながら決めていく。チームは生き物だから、野球部の枠の中にただいるだけではダメ。ひとりひとりが結束して組織ができるんだという意識をどれだけ持つかが大事だと思いました」

2 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る