市和歌山・松川虎生は「紀州のドカベン」。センバツ屈指の右腕を支える

  • 沢井史●文 text by Sawai Fumi
  • photo by Nikkan sports

 入学すると、ともに1年春からベンチ入りし、松川は夏の大会で4番を打った。上級生顔負けの鋭いスイングに規格外の長打力。マスクを被れば、高度なストッピング技術と強肩。その堂々としたプレーぶりは、1年生らしからぬ異様なオーラを放っていた。ここまで高校通算30本塁打以上を放っており、全国でも屈指の強肩・強打の捕手である。

 圧巻だったのは、昨年秋の県大会準決勝の智弁和歌山戦だ。

 1−3と2点ビハインドで迎えた8回表、一死満塁で智弁和歌山の最速145キロ右腕・中西聖輝から左中間に走者一掃の二塁打を放ち、一気に試合をひっくり返した。この試合、松川は初回にも先制打を放っており、負けられないライバルとの一戦で勝負強さを見せつけた。

 昨年秋までは不動の4番だったが、近畿大会終了後は3番で起用されることが多くなった。その理由を半田監督はこう語る。

「3番は1回に打席が回ってくるので、初回に得点する確率が上がる」

 今年に入ってからの練習試合でも3番で起用されることが多く、センバツでもその可能性は高い。指揮官の目論見どおりの野球ができるのか注目だ。

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 じつは、松川は捕手だけでなく、三塁手としての守備も目を見張るものがある。体が大きいわりに身のこなしが抜群で、「三塁手としての松川も見てみたい」と話すNPBスカウトも少なくない。

 とはいえ、やはり興味を引くのは"捕手・松川"だ。センバツ初戦の相手である県岐阜商には、高校生ナンバーワン捕手の呼び声が高い高木翔斗がいる。当然、高木のことは強く意識している。

「対戦が決まった時、まず高木くんのことが頭に浮かびました。すごくいい捕手。あまり意識しすぎないようにしたいけど、絶対に負けたくないです」

 県岐阜商との一戦は、小園のピッチングはもちろんだが、高校生屈指の好捕手対決からも目が離せない。

 ちなみに、松川の「虎生」という名前は、阪神が18年ぶりにリーグ制覇を果たした2003年に生まれたことから名づけられた。阪神の本拠地・甲子園で"紀州のドカベン"松川の活躍に期待したい。

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