進学校の控えから社会人野球の強豪入り。
新人賞左腕が急成長した要因

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 片山は今春から埼玉県の企業チーム・Hondaに入社する。昨年の都市対抗野球大会で優勝した名門である。いくら急成長を見せている片山であっても、いきなり戦力になるには厳しい競争を勝ち抜かなければならない。

 ところが、3月9日に開幕したJABA東京スポニチ大会で、片山はHondaの2021年公式戦開幕試合の先発に抜擢されたのだ。

 昨年のエース格だった朝山広憲が「しばらく投げられない」(開田監督)とコンディション不良で離脱した影響や、若手を底上げしたいチーム事情もあった。だが、チャンスをつかむにはオープン戦から能力の高さをアピールしなければならない。

 片山は大学野球と社会人野球の違いをこう語っている。

「まず、バッターが簡単に空振りしないです。あとは大学より『打線』になっていると感じます。1番から9番まで人それぞれの明確な役割があって、常に気を張っていないといけない。大学時代のように打順によって見下ろして投げることもできないので、投げにくいですね」

 一段高いレベルに身を置いても、片山は持ち前のストレートを武器に首脳陣からの信頼を勝ち取った。

 スポニチ大会予選リーグ初戦の三菱自動車岡崎戦は初回にタイムリーヒットを浴びたものの、2回以降は快調に0を重ねていく。打線や守備の援護を受け、片山は9回を投げ抜き、被安打5、奪三振8、失点1の完投勝利を挙げた。

「ビギナーズラックです」と片山は謙遜したが、実力のない投手が完投できるほど社会人野球は甘い世界ではない。

 予選リーグを3戦全勝で突破したHondaは、準決勝で三菱自動車倉敷オーシャンズと対戦する。負けたら終わりの大事な一戦で先発起用されたのは、またしても片山だった。

「どんどん振ってくるチームなので、キャッチャーの藤野(隼大)さんと話して立ち上がりは真っすぐで押していきました。ゾーン甘めでもいいから、思い切り真ん中に投げるつもりで」

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