2021ドラフト戦線は始まっている。敵も「えぐい」と脱帽する右腕に注目 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 3連投となった準決勝の桐蔭横浜大戦ではさすがに疲れが目立ち、4回2/3を投げて4失点で降板。前日に「ストレートがどこまで通用するか試してみたい」と勝負を楽しみにしていた渡部健人(西武ドラフト1位)に対しては、四球、センター前ヒット、中堅フェンス直撃の適時二塁打と打ち込まれた。とくに3打席目の二塁打はインコースを狙ったストレートが真ん中高めに入り、逆風を切り裂くような痛打を浴びた。

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 とはいえ、横浜市長杯で小向が見せたパフォーマンスは3年秋時点でのスカウト陣へのアピールとしては十分だった。高校時代に65キロしかなかった体重は今では75キロまで増えた。新井監督は「あと1年かけてもっと体をつくっていけば、球速はもっと伸びるでしょう」と明るい見通しを語る。

 共栄大にとっては東京新大学リーグのライバルとなる創価大に、同じく横浜市長杯で快投を見せた鈴木勇斗という3年生左腕もいる。岸監督が「馬力は八木智哉(元中日ほか)より上」と語る逸材とともに、来年は多くのスカウトが東京新大学リーグの公式戦に足を運ぶことになるだろう。

 今後、小向の変則的な投球フォームは賛否両論を呼ぶかもしれない。だが、投手は整った投げ方さえしていれば勝てるわけではない。打者を抑えるだけの能力があり、大きな故障をせずに長く投げられる投手こそ「一流」と呼ばれるのだ。

 小向直樹という投手にとっては、今後も変わらず投げ続けられるかどうかが己の存在価値の証明になる。

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