2021ドラフト戦線は始まっている。敵も「えぐい」と脱帽する右腕に注目 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 小向をスカウトした共栄大の新井崇久監督はこんな見方をしている。

「高校時代はもっと後ろから担ぐフォームだったのですが、少し改善されてきました。肩周りが柔らかいからか、故障が一切ないんです。持って生まれた柔らかさが生きたフォームなのだと思います」

 中学時代は3年生になるまで小柄で、本人も「硬式で続けられるレベルではないと思った」と伊奈町立南中の軟式野球部でプレー。高校は公立で強豪とは言えない桶川に在籍した。新井監督は高校当時の小向を「試合での勝ち方をわかっておらず、負けグセがついていたようなところもあった」と振り返る。

 高校3年夏は埼玉大会2回戦で県川越に2対5で敗退。当時はスリークオーターの角度で投げていたが、大学では新井監督から「上背を生かしたほうがいい」とアドバイスを受けて腕を振る位置を高くした。

 横浜市長杯では初戦の白鴎大戦で先発して8回10奪三振、無失点。翌日の日本体育大戦は9対8で迎えた7回二死三塁のピンチでリリーフ登板。2回1/3を投げて5奪三振、無失点に抑えた。連投した登板後でも、小向は涼しい顔でこう述べた。

「疲れはなかったです。筋肉痛が出るとしたら肩の裏が少し張るくらいですけど、出ること自体も少ないので。今日も全然気にならないくらいでした」

 腕全体の重量感を生かして放たれるボールは、打者のバットを押し込むような球威がある。本人は「リリースの時に上から叩きつけるイメージ」で投げているという。

 白鴎大戦では立ち上がりの初球から150キロを計測し、打者を圧倒。2三振を奪ってベンチに帰る際は、白鴎大ベンチから「えっぐ!」、共栄大ベンチからは「えぐいなぁ〜!」という声が飛んだ。まさに「えぐい」ストレートである。

 そして、小向の長所は変化球を器用に扱える点にある。「ステップ足のヒザが突っ張る投手はブレーキのかかる変化球が投げやすい」と語る指導者がいるが、小向も左ヒザが突っ張り、チェンジアップがよく落ちる。ほかにもスライダー、スプリット、ツーシームと高精度の変化球を操る。横浜スタジアムの固い土質のマウンドも「投げやすかった」と、相性がよかったようだ。

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