健大高崎2年生が22人206本塁打の衝撃。機動破壊から長打破壊へ (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 また、赤堀コーチの加入は健大高崎のチームカラーが転換する時期とも符合する。健大高崎といえば、「機動破壊」のスローガンが全国区になるほど走力を生かした戦いぶりが浸透している。

 だが、近年は「機動力も攻撃の一部」という位置づけになり、打撃力の高い学年も目立つようになった。

 前出の小澤が健大高崎を選んだ理由は「バッティングの強いチームで、バッティング練習が多いから」。選手の意識も少しずつ変わってきている。今年に入ってからは、新たなチームスローガン「スペクタクル・ベースボール」を打ち出した。命名者である青柳監督は、その心をこのように語る。

「我々が目指すのは、大仕掛けでファンを喜ばせて球場全体を味方につけるような野球です。機動破壊を受け継ぎながら、相手に『健大は何をしてくるかわからない』という恐怖感を植えつける。つまり、機動破壊が進化して『スペクタクル・ベースボール』という形になったんです」

 今年はコロナ禍のため夏の全国高校野球選手権大会が中止になり、健大高崎は群馬県の独自大会をオール3年生の編成で臨むことになった。そのため、2年生以下はグラウンドでの練習があまりできず、室内練習場でひたすら打ち込んでいた。

 選手が「あの練習が大きかった」と口を揃えるのが「近距離バッティング」である。打撃投手が10〜12メートルの距離から変化球を交えて全力で投げ、速球への対応と選球眼を磨いた。

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 秋の関東大会では4試合で8本塁打。とくに準決勝の専大松戸戦では5人の打者が本塁打を放ち、その打力を見せつけた。8番打者の綱川は大会通算2本塁打、下位打順とは思えない鋭いスイングを見せていた。「1番から9番までどこでも点を取れるようにするのが自分の仕事」と語っていた赤堀コーチの言葉どおりの強打線になりつつある。

 その一方で、秋の戦いではお家芸だった走塁面でのミスが目立った。主将の小澤はこんな反省を口にする。

「自分たちは打撃のチームと言われてきましたが、プラスアルファの守備・走塁をやっていけば、全国一になれると思っています」

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