ドラフト注目の福井の怪腕。指揮官
「ゾーンに入ったら打てない」と絶賛

  • 沢井史●文 text by Sawai Fumi
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 例年なら4〜5月に春季大会があり、練習試合を挟みながら5月から6月にかけて追い込み練習を行なう。その後、夏の大会直前の7月上旬に練習量を落とす、いわゆる調整期間を設けてから夏の大会に挑む。

 だが、今年はコロナ禍の影響により、5月はほとんど追い込めず、6月以降集中的に練習し、調整期間をほとんど設けないまま大会に突入した。そのため疲労が残り、笠島の調子はなかなか上がらなかった。

 初戦の三国戦は、序盤から相手打線につかまり4回を投げ3失点。続く羽水戦では7回で11三振を奪ったが、7安打を許し2失点。準々決勝の啓新戦では12安打を浴びた。「いつもと違う状態で夏を迎えたのでバテやすかった」と本人が語ったように、本調子とはほど遠い内容のピッチングが続いた。

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 それでもきっちりまとめられるのが笠島のポテンシャルの高さだ。東監督は言う。

「大会を通して調子はよくなかったです。でも、準決勝、決勝と点を取られなかったのは、さすがでした」

 笠島は「エースである以上は、どんな状況でも抑えないといけない」と力強く語った。

 初めてエースナンバーを背負った昨年春の北信越大会では、決勝で星稜の奥川恭伸(現・ヤクルト)と投げ合った。

「ああいうピッチャーがドラフト1位でプロに行くんだと痛感させられました」

 スピード、コントロール、そしてゲームメイクと、すべてが高校生離れした奥川のピッチングに笠島は大きな刺激を受けた。奥川は1点を失うも11奪三振、完投勝利。笠島も8回を投げ2失点と粘投したが、「ピッチングの内容は違いすぎます。奥川さんと終盤まで投げ合って、学ぶことばかりでした」と振り返った。

 それでも超高校級の投手と投げ合えたことで、プロへ挑戦したいという思いも強くなった。独自大会を終えても、笠島はグラウンドに来て練習を続けている。

「将来はどんな状況になっても勝てるピッチャーになりたいです」

 そう意気込みを語る笠島は、静かにドラフトの日を待つ。

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