巨人三軍戦で圧巻の投球。JR東日本の剛腕はプロ入りへギアアップ (2ページ目)

  • 高木遊●文 text by Takagi Yu
  • photo by Takagi Yu

 1年目は思うような結果を残せなかったが、2年目の今季、大きな飛躍を遂げることになる。

 コロナ禍により長い自粛を強いられたが、それが明けるとアマチュアの強豪チームやNPB相手に好投を続けた。なかでも6月下旬の巨人三軍戦では5回を投げて無安打、5奪三振と圧巻のピッチングを見せた。

 その要因はいくつかある。昨年はいいところに投げようとしすぎるあまり、逆に制球力に課題を残したが、今年は「キャッチャーミットまでの軌道をイメージするように」と意識を変えた結果、制球力だけでなく持ち味のキレのよさも磨かれた。

 なにより大きかったのは、「しがみついてでもプロに行きたい」というがむしゃらさが出たことだ。

 きっかけは同期のケガだった。捕手として入部した柴田紘佑が自打球を目に直撃させる大ケガを負ってしまった。それでも投手に転向し、なんとかチームの力になろうとする柴田の姿勢に考えさせられるものがあったという。

「柴田の姿を見て、僕はこれまでケガを言い訳にしていたと思いました。でも、僕のケガなんてたいしたことはない。『オレも本気になる。一緒に頑張ろう』と柴田に伝えました」

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 大学時代に抱いたNPB入りの夢に向かって、もう一度ギアを入れ直した。持ち味だった右腕のしなりを使ったフォームも復活した。

「僕より結果や実績を残してきた選手はたくさんいます。自分はヘタクソだと思って、もう一度やってやろうという気持ちです」

 これまでは、いい意味でも悪い意味でもおっとりとしたマイペースな印象があっただけに、次々と口をつく熱い言葉に驚いた。

 身長179センチ、体重82キロと大型投手が増えた今ではそこまで目立つ体格ではないが、最速149キロのストレートは球速以上に伸びとキレがあり、打者を詰まらせる。また、「社会人はごまかしが効きません」と語るように、強者揃いの社会人の打者相手にも通用する変化球も身につけた。

 9月23日から始まる都市対抗予選。チームを勝利に導くため、今度こそNPB入りの夢を実現するため、石井は最高のピッチングを誓う。

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