巨人がドラフト1位で狙うスラッガー。謎の自信が本物に近づいている (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sankei Visual

 また、課題の選球眼については、改善策を独特の言葉で説明してくれた。

「自分から動いていったらダメだなと思います。顔、体を動かさない感覚。ダメなときは、自分から動いていって、曲がっていく球についていってしまう。自分が動くことで、より変化を大きくしていっている気がします」

 こう語った1週間後、9月12日に開幕した秋季リーグで佐藤は初戦で本塁打を含む2安打1打点、2戦目には2安打4打点と上々の滑り出しを見せた。

 佐藤のスケールの大きなスイングを見ていると、「ボールをどこまでも遠くに飛ばしたい」という欲求に突き動かされて野球をやっているように見えた。だが、それは私が勝手に頭のなかでつくり上げていた佐藤像に過ぎなかったようだ。

「自分がイメージする、理想の打球はどんな打球か?」そう佐藤に尋ねてみると、こんな答えが返ってきた。

「フェンスを越えれば何でもいいです。詰まろうがバットの先だろうが、90メートルだろうが140メートルだろうが、ホームランはホームラン。130キロのボールを150メートル飛ばすのもうれしいし、160キロのボールをポール際に打ち込んでもうれしいですから」

 あくまで野球という競技のなかでのホームランにこだわる。それが佐藤にとっての野球の楽しみ方であり、チームへの貢献の仕方でもある。

 最後に聞いてみたいことがあった。いくら他人からの評価に関心のない佐藤であっても、自分自身に関心がないはずがない。佐藤本人は、佐藤輝明という選手をどのように評価しているのか? すると、佐藤は静かに口を開いた。

「自分にはめちゃくちゃ期待していますね。もっとできるはず。こんなもんじゃない。まだまだ足りないところだらけですから」

 この言葉を聞いて、ふいに武者震いが起きた。佐藤は自分自身の底知れぬ可能性を知っている。それは思い上がりでも、もはや「謎の自信」でもない。周りが佐藤に抱くロマン以上に、佐藤は自分自身に夢を託している。

 佐藤という打者は、もしかしたら即戦力ではないかもしれない。だが、夢のあるスラッガーであることだけは間違いない。

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