木製バットに順応。高校生合同練習会でプロ熱視線の逸材が快打連発

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

甲子園交流試合No.1スラッガーは? 強打者12人のスカウト評>>

 金属バットが「魔法」だとすれば、木製バットは「真実を映し出す鏡」なのだとつくづく感じる。

 たとえ高校野球で何十本ものホームランを打った打者でも、木製バットに握り換えたとたん、魔法が解けたように打球が飛ばなくなることはよくある。

 今年初めて実施されたプロ志望高校生合同練習会では、大半の打者は木製バットで参加した。多くの参加者が慣れない木製バットに悪戦苦闘するなか、群を抜いて順応性の高さを見せた打者もいた。

 西日本会場(甲子園球場)なら中山礼都(中京大中京)、そして東日本会場(東京ドーム)は高寺望夢(たかてら・のぞむ/上田西)である。

高校生トライアウトで存在感を示した上田西の高寺望夢高校生トライアウトで存在感を示した上田西の高寺望夢 ともに右投左打のショートという共通点はあるものの、置かれた立場は対照的だ。中山は昨秋には明治神宮大会優勝、今夏は甲子園交流試合を経験しており、すでに全国区の知名度を獲得していた選手だった。

 一方、高寺は全国舞台に登場した経験はない。上田西の吉崎琢朗監督は、合同練習会に参加した経緯をこう語る。

「コロナ禍の練習自粛の時期が明けてから、12球団のスカウトの方が見えて、何球団かは上の方(スカウト部長など要職)にも見てもらっています。評価してくださるスカウトの方もいるのですが、私も本人も決定打に欠けると感じていました。ウチは田舎のチームですし、高寺は全国的には無名でアピールしなければいけない立場。高寺も『行きたい』と言うので、合同練習会に参加しました」

 あるスカウトは「西日本会場に比べて東日本会場は選手数も少なく、残念ながらレベルも低かった」と明かした。とくに東日本会場は野手の層が薄かったが、高寺がシート打撃で見せたパフォーマンスは鮮烈だった。

 6打数5安打2四球。特筆すべきは、初対戦の6人の投手と対決して、この数字を残したことだ。ヒットを放った投手のなかには、橋本拳汰(健大高崎)といったドラフト候補も含まれている。この日、東京ドームに集まった75人のNPBスカウトの前で、高寺は存分に能力を発揮してみせた。

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