1週間500球の制限に「公立つぶし」の声も。初適用の当事者たちが語る違和感 (3ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • photo by Nikkan sports

 球数制限によってエースがマウンドを降り、2番手以降の投手が打たれて試合が崩れてしまう──。このルールができた当初から懸念されていたことが、決勝戦で起こってしまった。このルールが適用される限り、同じようなことは今後もあるだろう。だが試合後、原田は悔しさを押し殺して淡々と振り返った。

「球数を考えて試合はやれません。というよりも、考える余裕がなかった。疲れもあって、いい調子ではなかったので......。球数より、自分は最後までしっかり抑えようということだけ。交代したら、あとのピッチャーに任せるしかないです。1週間で4試合投げるのは、肩やヒジに影響があると思います。500球ルールは仕方ない。控えも含めてチーム力なので」

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 一方、勝った札幌第一の菊池雄人監督も複雑な表情を見せた。球数制限についての率直な感想は、「興ざめした」だった。ルールとはいえ、球数が制限に達したからといって相手エースがマウンドを降りてしまうのは、せっかくの好勝負に水を差してしまう。試合前から「あと75球」というのはわかっていたが待球戦法はせず、あくまで原田を打つことにこだわった。

「選手には球数のことは一切言いませんでしたし、ベンチで球数のことを言う選手もいなかった。選手たちに言ったのは、『原田に勝つ』ということ。原田に勝たないと勝ちはない。原田が投げているときに負けていて、代わったあとに逆転したとなるのは後味が悪いですから」

 言葉どおり、札幌第一は初回から積極的にストライクを打ちにいった。原田が投げている間、リードを奪うことのほかに菊池監督がこだわったのは、500球を迎えるタイミングだった。

 5回の攻撃が始まる前に「(500球まで)残り8球」というのはわかっていた。淡白な攻撃をすると5回を投げ切られてしまう。それだけは避けたかったと、菊池監督は言う。

「5回が終わるとグラウンド整備が入るため、試合が止まってしまう。それで6回からスパッと投手が代わってゲームが膠着することがあるんです。なので、5回の途中、できればランナーを背負った場面で代わることになればいいなと思っていました」

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