好捕手ひしめく高校生ドラフト候補。
成田の逸材は抜群に「動ける」

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 真夏の高校野球では投手のダメージばかりがクローズアップされるが、捕手が受けるダメージも相当なものだ。ただでさえ暑いなか、マスク、プロテクター、レガースと体中を防具で覆われ体力は消耗する。投手は継投できても、捕手を途中で替えられるチームはごく少ない。

 古谷の故障はすでに治っているものの、尾島監督の中堅起用は見落とされがちな捕手のリスクヘッジといえるかもしれない。

 成田では、選手は複数のポジションを守ることを求められる。古谷は捕手、中堅手に加え、一塁手も守れるという。だが、「どのポジションが好きですか?」と聞くと、古谷は迷わず答えた。

「やっぱりキャッチャーです。ここだけは譲れません」

 この成田北戦、5対4と1点リードした7回表の守備から、古谷は中堅から捕手に回っている。古谷は「(ピッチャーは)誰と組んでも抑える自信はありました」と強気に語る。その言葉どおり、粘り強い成田北の反撃をかわし、無失点へと導いた。

 尾島監督は「最後は守備的にベストの布陣を組みました。(古谷が捕手に入ることで)内野がちょっと引き締まってきますよね」と評価した。

 今年の高校生捕手は内山壮真(星稜)、関本勇輔(履正社)、牧原巧汰(日大藤沢)、二俣翔一(磐田東)といった選手がスカウト陣の高い評価を受けている。そのなかで古谷が持つ際立つ武器といえば「動ける」点にあるのではないか。尾島監督に尋ねると、うんうんとうなずいてこう答えた。

「僕が教えてきたなかでこれだけ動けるキャッチャーは初めてです。常に先の塁を狙ってもらいたいですし、その姿勢は先の世界でも大事になってくる。それが自分の売りになってくれればいいと思います」

 試合中はイケイケに見えた古谷の走塁だが、試合後に本人に聞くと無鉄砲に走っているのではないことがわかった。

「相手のシートノックでの肩の強さなど、情報をすべて頭のなかで整理して、『行ける・行けない』の判断をしています。オーバーランを広くとることも日頃からやっていることなので、特別なことではないです」

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